27・刺繍が縫えないからのー…
第27話
紅露さんと楽しい買い物巡りが出来て嬉しかった。
夕飯もお風呂も急いで食べて入って部屋で購入してきた刺繍セットを鞄から取り出し机の上に置いた。
刺繍枠に布をセットして紅露さんに似合う糸を針に通して携帯で調べた家紋を縫う事にした。
「紅露、喜んでくれるといいなぁ…」
その気持ちでいっぱいになっていたのにいざ縫おうとしたら手がピタリと止まった。
「あれっ?私…刺繍って縫えたよね…?」
記憶の中の私は側に殿下がいるのも気付かない位真剣に縫っていた記憶が蘇る。
「……それなのに?何故…縫えないの?」
縫い方が分からない……。
携帯の画面には紅露さんの家紋が映し出され早く縫えって言ってる気がして画面を消した。
「私…どうしちゃったの…?」
刺繍枠を机の上に置いて立ち上がった。
視線に全身鏡が目に入り全身が映り込む。
「刺繍が好きな気持ちは分かる…本当に?この気持ちは嘘なの?」
服の
「霞ー?あのさー…」
「!!」
紅露さんの声が聞こえて来てこんな姿見られたら心配されちゃう!と慌てて涙を拭き取って無理矢理笑顔を作る。
「霞、あのさー…」
「どうかしたの?紅露」
ガチャッと扉が開いて紅露さんの顔が覗くけど下を向いて何かを見ていた。
「!?」
「……」
慌てて顔を上げた紅露さんは無言で私に近付き頬をなぞった。
「…泣いていたのか?どうした?リリナーア」
「え"っ…!?」
私、涙は溜めていたけど拭き取ったよね?
「どうした?何か気分悪い事でもあったのか?」
「えっ?何も無いよ!」
何処かに私の涙の匂いなんて落ちてるの?
なら慌てて拾い上げなくちゃってそんなの落ちてる訳無い!!
「リリナーア、俺の知らない所で悲しい気持ちは隠すなよ」
「…うん」
その言葉を言うだけで精一杯だった。
「リリナーアの
「…そうだね。ありがと…」
紅露さんが私に近付いてくれるから私も近付きたいけどこれが
「…でも、頼ったら本当に頼りっきりになりそうだから怖い…」
「面倒くさいなんてウザいなんて思わないよ。リリナーアだよ?俺の可愛い彼女なんだから」
「….ありがとう」
胸がズキッとする。
この言葉が本音だったらどんなに嬉しくって飛びかかってしまう。
この気持ちがどんな気持ちかもう分かってるけど見て見ぬフリをしよう…。
「リリナーア、そうだ!これ」
「これ?紅露何?」
紅露さんが使っていた本を渡された。
嬉しいから大事に使おうと思います。
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