第37話

「結局、オレが来てからは起きないな……」

 夜。

 眠っているファムータルの顔を覗き込んで医者に睨まれているサティラートに、戻ってきた丁鳩が、

「これから回復すれば、前みたいに話せるさ。

 ライも鈴華に会えて満足だろ?」

 悪戯っぽく言う。


「あー、文通してたってな?」

 ずい、と、鈴華に迫るサティラートの笑顔が容赦ない。

「兄貴、やめてくれ。

 鈴華が困ってんだろ」

 言って、サティラートの腕を掴んで退出していく。


「おい、礼竜置いてどこ行くんだ?」

「執務室に決まってんだろ。終わってねぇんだよ!」


「お嬢! 礼竜の耳元で【愛してる】って囁き続けてくれ!」

 とんでもない爆弾を置いて、サティラートは弟に引っ張られて退出した。

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