第34話
「ああ、よしよし。
鈴華のせいではない……大丈夫だ」
魔力――ファムータルの中にある自身の魔力を介して話を聞いていたのか、寝台から上半身を起こしていた祖父は、部屋に入ってくるなり泣き始めた未来の孫娘をあやしはじめる。
「遅かれ早かれ、礼竜も成長してしまう。
……まあ、あのカスは妙な薬で礼竜の成長を遅らせていたようだが……それでも成長する。
そうなれば、どの道カスは本性を顕したのだ……」
奴隷市で売られていた少女が王族に見初められるだけでも国中の嫉妬をかうのに、まして死にかけの身体の治療のため、恐れ多いことに魔力を全て賜るなど有り得ない。
しかも、魔国の誰もが早く王位を継いでほしいと思っている、祝福の子の腕の中に収まろうとしている。
彼女に対する風当たりは、この先強いだろうと確信していた。
「まったく……礼竜も説明してから口説くのが礼儀だろうに……
自覚がなかったのだな……」
久しぶりに説教をしなければ……。と、彼女を腕の中で泣かせながらごちていた。
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