第32話

「それにしても……思っていましたが、殿下の魔力容量は途方もないですね……」

 魔法医が感心したように呟く。

「王族二名の魔力を併せても半分以下……

 私の魔力もベニトア石のように吸い込まれましたし」


「だからそれだけ、失くされると後が大変なのよ。

 本当にご自覚いただかないと……」

 ファムータルに聞こえてもいい会話だと判断して医師は言う。


「……あ……わたし……」

 首から掛かったファムータルの銀糸を握りしめ、彼女が震えだす。

「わたしが……」


「鈴華様は悪くありません。

 殿下が無謀とはいえくださったものです。無駄にしないでください」


 そう言われても、ただ意味も知らずもらったものにしても、全ては自分のせいではないかと思う。

 写絵と写音で見た限り、あのカスもファムータルが女に興味を持ったことを切欠として行動に出たこと、そしてファムータルが魔力を失くしたことが最大の犯期を作ったことは間違いない。


「お義祖父様のご様子を……見てきます……」


 逃げるように彼女が去った後、


「失言だったわね……」

「疲れが出ていますね……。

 殿下のご容態まとめたら、丁鳩邸こちらの医師と代わってもらいましょう」

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