第15話

――なんと……なんと心地いいのだろう。


 呪いに満ちたこの身には、過ぎた悦びだと素直に思う。


「……ああ……ファム様……」


 どこにでも居そうな黒髪の中年男。

 だが、その瞳は――この魔国王家の赤だった。


「なんと清らかな……」

 全身を巡る風に任せ、草原で蒲公英の綿毛が舞う中、手を取り合って【運命の女性】と歩く姿を思い浮かべる。


 部屋中、【運命の女性】の写絵でいっぱいだ。

 医者の役得で、決して他者が見られない姿を映してきた。


「ああ……ファム様……

 ……私の……姫……」


 魔国の医者は、ファムータルから彼女に移してほしいと言われていた魔力の一部を、自分に付与していた。

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