第14話

「……にいさま……にいさま……」

「殿下、お静かに。治療に差し障ります」


 ファムータルを回収したエルベットの医者二人は、肌の爛れを観察しながら処置を始めていた。


 女性の医師がファムータルの柔らかな銀髪を掻き分け、

「ダメ。露出してた首から上と手、頭皮も。

 データ取ったら魔力治療して」

 部下の魔法医に言う。


「どうして……」


「殿下は魔力で陽を防がれていたでしょう?

 魔力がなくなって、護るものがなくなったんです」

 医者はファムータルの呟きに答えたつもりだったが、呟きの相手は違っていた。


「にいさま……どうして……」

「殿下、お静かに。治療できません」


「……にいさま……にいさま……」

「……失礼致します」


 医者が眠り薬を嗅がせ、ファムータルの意識は深く深く落ちていく。


「あ……どあ……どこ……」

 流れる涙さえ、治療の邪魔と医者が拭った。

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