第28話

本当なら、奈都のことを思うなら、死んでほしいルイと別れてヒカルのところへ行ってほしい。ヒカルだってそっちの方が喜ぶのに。


あんたを幸せにしてくれるのは、絶対にヒカルの方なのに…。



「ウミくんはヒカルの事が大好きなんだね」



子供みたいに話す俺に、まるで大人みたいに笑いかけてきた奈都。



「…大好きっていうか、家族の仲で…信頼できるのはヒカルだけなんだよ」


「ウミくん」


「……」


「……もしかして何かあった? 本当は偶然じゃなくて、私に会いに来てくれた?」


「……」


「ウミくん」


「…別に、」




奈都がじ…っと俺の方を見てきたから、思わず、顔を下に向けた。なんて言えばいいか分からなかった。まるで見透かされてるような奈都の瞳。



「もしかして…ヒカルに何かあった?」


「…違う……」


「違う?でも、何かあった顔してるよ」



何かあったって、どんな顔だよ。

俺はいつも、こんな顔…。



「…ウミくんも、泣きそうな顔してるよ」



……は、?

泣きそう?

何言ってんだと、目元をおさえた。



「ヒカルも、ウミくんみたいに悲しそうな顔してた。本当に2人は似てるから…」


「…」


「何かあったなら、相談乗るよ?」



相談なんか、できるわけない。

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