第26話
いい年をした大人が、子供を殺そうと考えるなんてどうかしてる。本当に異常な考え。頭がイカれてる奴と、分かち合えるはずなんかない。
理性があるのに、そんな考えに至る思考が分からない。どうしてみんな、ヒカルみたいに普通になれないのか…。
ヒカル…。
ヒカルにはこの話、絶対耳に入れないようにしないと…。
次の土曜日、奈都に会うために図書館へ行ってみた。朝から夕方までずっといたけど、奈都は来なかった。とんだ無駄な時間だった。
次の日の日曜日も朝から来て、奈都が来なかったらどうするかと思っていた矢先、奈都は現れた。
俺が図書館内を歩き、奈都を探している最中に奈都は来たらしく、もう自習机に向かって勉強をしているところだった。
図書館で勉強をしていると言っていた奈都は、静かに1人で勉強をしていた。
周りの赤の他人も静かに本を読むか、勉強をしていて。奈都に声をかけるのを戸惑ってしまった。
きっとたった今勉強をしたばかり。奈都の勉強の邪魔をしてもいいのか。
見つけたんだから別に話しかけるのは後でもいいんじゃないか。
そう思って、奈都に話しかけたのは約2時間後の奈都がトイレに向かった時だった。
奈都は俺がいることに驚いていた。けれども嬉しそうな顔をしてすぐに「ウミくん!」と名前を呼んだ。
「すごい偶然だね、ここで2回も会うなんて」
図書館内だから、静かに話しかけてくる奈都。
──偶然なんかじゃない。
俺があんたに会うために、待ち伏せしていた。でも、そんなことは言えなくて。
「本、借りに来てて」
「そうなんだね、私向こうで勉強してて」
そう言って、たった今まで奈都が勉強していた方向へと指を向ける。
知ってる。
邪魔しちゃいけないと思って、見てたから。
「ふうん…」
声をかけたもののどうやって切り出せばいいか分からない。
ルイの話から始めるか?
俺がルイのこと、嫌いって奈都は分かってるのに?
「また、ルイの事勉強してんの?」
そう言った俺に、奈都は苦笑いをした。だけど少し悲しそうで。
「ううん、普通に…受験勉強。ウミくんは受験勉強してる?」
「それなりに」
「そっか、ウミくん、頭良さそうだもんね」
「……」
「……ごめんなさい、あの、ウミくんって呼ばない方が良かったかな」
ウミ…?
ああ、確かあの時、奈都に八つ当たりして、それらしい事を言ったっけ?
優三なんて、虐待と一緒って。
「いいよ別に。名前なんて変えられるもんじゃないし」
ぶっきらぼうに言えば、奈都は困った顔をする。
「…そっか、」と。
俺は別に奈都を困らせたいわけじゃない…。
「…ちょっと、聞きたいことがあって」
「え?」
「ヒカル、」
「ヒカル?」
「には、内緒にしてほしいんだけど」
「?」
「ヒカル、前に…傷ついた顔をしてた。その理由あんたは分かる?」
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