第8話

土曜日、もしかしたらルイを受け入れられるかもしれない、そう思って図書館に来ていた。ネット検索だけでは分からないこともあるから、図書館に置いている医学書を読んでみた。


けど、異常性癖というのは、医学書でもあまりなく。

精神疾患の本の目次を見て、──これじゃない、こういうのじゃないと、何十冊もの本を開いた。


こうしてみると、異常性癖というのは世間でも珍しいことだと分かる。

珍しいということは、受け入れられていないのかもしれない。俺のように。

やっぱり家族がおかしいんじゃないか…。



そう思ってもう1冊と、本を手にしパラ…とページをめくった。そして目次を見て、こういうのじゃないと本を戻そうとした時、「ウミくん?」と、俺の名前を呼ぶ声がした。



その声には聞き覚えがあった。

2度、俺をルイと見間違えた人。



少しだけ顔を横に向ければ、やっぱり彼女がいて。



「偶然だね、髪染めたの?誰か分かんなかったよ」



にこりと笑った、ルイの彼女…。

ヒカルよりも、ルイを選んだルイの彼女。

3つも年上なのに、同じ歳に見えるほどの童顔。美人というよりも、かわいいという言葉が似合う人。



「…どうも」



あんまり、この人には会いたくなかったな…。そう思って本に視線を戻し本棚に入れた。

奈都──というルイの彼女は本棚の方を見ると、「ルイくんのこと、調べてたの?」と嫌なことを聞いてくる。



「…別に…、ルイよりもおかしい病気、持ってる人がいるのかと思って」



俺のセリフに苦笑いをした彼女は、「私もここの本、読んだよ」と俺から本棚に視線を移した。



「でも、どれも当てはまらないんだよね」


「全部読んだの?」


「うん、ルイくんが施設に行ってから結構ここに通ってるから」



3ヶ月も?



「あんまり、ここの本棚に人はいないから、ウミくんがいてびっくりした」



柔らかい笑みを浮かべる彼女に、聞きたいことがある。どうしてヒカルじゃなくてルイを選んだの?

どうやってルイを受けいれたの?



「俺だってよく分かったね。いつもルイと見間違えてたのに」



少し嫌味っぽく言えば、「もう分かるよ」と困ったように笑い。



「だから髪の色変わっても、すぐに分かったんだよ」


「…」


「それに、どちらかというウミくんって、ヒカルに似てるから。もうルイくんに似てるって思わないかも」



彼女の言葉に、は?と思った。

俺はヒカルに似てない。

誰もがルイと似てると言う。



髪色だって、ヒカルは明るい茶色。

目の色だって──…色素の薄いヒカルと違って、俺は黒より。どちらかと言うとルイに近い。




「どこがヒカルと似てる?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る