第6話

髪を染めたら、海吏君はショックを受けるだろうか。


でも、俺の気持ちだって分かってほしい。


いつまでもルイに似てると言われたくない。


ルイの彼女にも、後ろ姿で間違えられた。




俺は別に、赤毛がイヤって思ってるわけじゃない。


ルイに似てるからイヤなんだ…。


ルイが赤毛じゃなかったら、染めようなんて思わない。





家に帰れば、ヒカルが黒染め用のカラー剤を買ってきてくれていた。

俺の部屋の、机の上に置いていてくれた。

それを持って、ヒカルの部屋へ行こうとした時、ちょうど父親が階段から上がってくるところだった。



ルイと、ヒカルの父親…。



父親は俺の持っているものを見ると、俺の方に目線を合わせた。父親は背が高い。体の小さい母親と比べると、余計にそう思う。



「…どうしたの?なんか用事?」



俺はカラー剤を少しだけ背中に隠した。でももう、何を持っているかはバレている。



「いや、ルイの部屋掃除しようと思ってな」



ルイの部屋?

ああ、そっか、母親は足のせいで階段を登れないから。



「……染めるんか?」



父親は怒っている様子ではなかった。普通だった。染めるなと言われるかと思っていた俺は、少しだけ拍子抜けして…。



「うん、もう…受験生だし」



作っていた言い訳を言えば、父親は「そうやな」と言う。



「染めたろか?」



その言葉に、父親の顔を見上げた。



「…ううん、ヒカルに染めてもらう」


「お前らほんま仲ええな」



仲いい…。


それは俺の逃げ場が、ヒカルしかいなかったから。



「海吏くん…」


「ん?」


「怒ると思う?」



少し、不安気味に言えば、「…大丈夫やろ」と、落ち着いた声で言ってきた。



「あいつも昔、髪黒かったからな」

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