第5話

──学校の新学期のクラスの3分の1が、名前も知らない生徒だった。隣に座っている女子も、関わったことがない。それなのに「ウミくんだよね?隣になれて嬉しい!」と言ってくる。




「名前、知ってるの?」


「うん、もちろん。有名だもん」



何が有名?



「有名なの?」


「赤い髪ってやっぱり目立つし、それにかっこいい兄弟もいるんでしょ?私、お姉ちゃんが同じ学校で写真見たことあって。三兄弟で美形ってすごいよね。あ、ヒカル先輩は知ってるよ?見たのはもう1人の方!」


「…」


「ヒカル先輩より、もう1人のお兄ちゃんの方が似てるね、ウミくん」


「…そうかな」


「ほんと、神城兄弟って有名だよね」




確かに、ヒカルは有名だった。

でも、ルイは知らない。

知りたくもない。






放課後、駅の方で本を買いに来た時、「ルイくんの弟さん?」と話しかけられた。



高校生の2人組の女だった。

その女たちは喋る。

そっくりだからすぐに分かったよ!と。


最近、ルイくん来てないけどどうしたの?と。

本当に赤い髪って地毛なんだぁと。






ルイのせいで絡まれるのは、日常茶飯事だった。


この髪色がそうさせる。



だから早く、髪を染めたかった。

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