第4話

家族の中で、俺はヒカルが一番好きだった。というよりも、信用できて頼りになるのがヒカルだけだった。


父親も、母親も、本当の父親も、必ず真っ先に考えるのがルイだから。


だからなのか、俺は自分の名前が嫌いだった。

誰がつけたのかも、知りたくもないぐらい嫌いで。

どうせなら、ヒカルが俺の名前をつけてほしかった。



るいも、ひかるも、父親からとったくせに…。


なんで俺だけは……──。









ルイが施設に行ってから3ヶ月が経ち、中学校最後の新学期を迎えた。3ヶ月経ってもルイがいなくなればいいという気持ちは変わらなかった。



「なあ、ウミって行きたい高校決まってんの?」



洗面台で赤毛をワックスでセットしている最中、その後ろからネクタイを締めるヒカルが聞いてきた。


高校なんて、別にどこでもいい。

まあ、言うならば…



「あいつがいないとこ」




ポツリと言えば、「そういえばルイ、留年になるもんな。来年お前が来たらかぶるな」と軽く笑いながら言ってきた。



本当に…。

ヒカルだけいるなら、ヒカルと同じ高校に行きたかった。

けど、ルイが休学中だから、もう1回高校2年生をやり直すことになる。そうなれば高1と高3でかぶってしまう。



「ヒカル…、お願いがあるんだけど」


「んー?」


「髪、染めたい」



ピクリと反応したヒカルは、眉をよせた。



「……父さん、怒るかもよ」



赤毛は、遺伝だから。



「なんで父さん? 海吏君からの遺伝なのに」


「ウミ」


「腹立つんだよ、鏡見ればルイみたいで」


「……」


「お願いヒカル、染めてよ」


「髪はなぁ…」


「受験の年だからって言えば、父さん達も許可してくれるよ」



ヒカルは何か言いたげそうな顔だったけど、「…染め粉、買っとく」といい脱衣場から出ていった。

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