第2話

本当に、ルイのどこかいいか分からない。

あいつは異常なのに。

嫉妬して、人を殺すなんて──

もう月日が経って、ベッドに寝転びながら雑誌を読み始めたヒカルの首には痣は無い。

あいつに締められた首元の痣。



「ヒカルは許せるの…?」


「ルイ?」


「うん、もし性癖が無くなったとしてもルイのしてきた事は変わらない…」


「そうだな」


「ヒカル、殺されそうになったんだよ。それなのに許せるの?」


「…」


「俺は無理、許せない…」


「ウミ…」



ヒカルが雑誌から顔を上げて、俺の方を見た。



「今でも震えるぐらい、ルイが怖いのに」



ヒカルはさっきのように起き上がると、雑誌を枕元に置いた。


──今は、年明け。冬休み。


学校が無く家でゆっくり過ごせてはいるけど。

これはルイがいないからこそできること。ルイがいれば、簡単には休めない。


昔のように────寝ている間に、枕元にルイが包丁を持っていたらと思うと、マジで怖いのに。



「…半年は施設に入るって言ってたし。それまではゆっくりしよう。それでももし無理なら海吏君のとこに行けばいい」



海吏…、俺の本当の父親。



「焦るなウミ」



焦るなと言われても。



「俺ん家、異常だよ…」


「ウミ」


「兄から逃げる場所が、本当の父親の場所なんて。──〝普通〟じゃない」




わざと、〝普通〟という言葉を口する。



俺の言葉に眉をひそめたヒカルは、「…そうだな、普通じゃない」と、悲しそうな顔をした。



俺は、ヒカルの悲しそうな顔を見たいわけじゃないのに…。

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