ノーモフィリア

第1話

「機嫌良さそうだな」


そう、兄が言った。

兄と言っても2番目の兄。



「うん、あいつがいなくなって嬉しい」



〝あいつ〟が誰か分かってるらしい2番目の兄、ヒカルは俺の言葉を聞き静かに笑った。

呆れたような笑い方だった。それでも俺の気持ちが分かっているヒカルは「そうだな」と頷く。



「3日か、ルイが入院して」



長男の名前を言ったヒカル。

ルイなんて、あいつ呼ばわりでいいのに。

ヒカルはあいつに首を絞めれて殺されそうになったのに。少なからず、あいつの事を家族だと思っているヒカルに眉が寄るのが分かった。



「嬉しくないの?ヒカルは」


「嬉しいってより、ちょっと気が抜けてる」



気が抜けてる…。

その意味はすぐに分かった。

──あいつが、ルイが誰も殺さないか見張らなくていいってこと。

ルイの殺す対象、つまりはルイの彼女はもう──いや、しばらくは殺されることはないってこと。イカれた性癖を持つルイによって。



「もう、ルイの彼女、殺されないから?」


「さあな」


「俺、奈都って子、きらい」


「なんで?」


「ヒカルよりもルイを選んだから。どう考えてもヒカルの方がいいのに」



少し、イライラした口調でそう言えば、今度はヒカルは苦笑いの表情をした。



「ルイのどこがいいんだろう」



俺の質問に、ヒカルは返事をしてくれなかった。

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