第32話
滝川摂……恐るべし。
「月島さん?聞いてる?」
滝川君はあたしの右腕に少し力を込めた。
「た、滝川君。申し訳ないんだけど私は無理だよ。」
「どうして?」
どうしてって聞きたいのは私の方なのに。
そんな目で私を見ないで欲しい。
もうどれが滝川君なの。
優しさと冷たさの緩急がこんなに凄い人いるの。
違う、そんなんじゃない。彼は危ういんだ。
「無理って言ってもあのファイル受け取ったでしょ。」
「か、返す!」
「返す?返却無効なんだけど。」
私は逃げようと腕を動かすけど全然離してくれない。
「は、離してくれないかな。」
「言うこと聞くと思ってる?」
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