第30話

それに気づいた滝川君は私の右腕を掴む。

私が痛くない程度に。

何を話していいか分からなかった。

「……慰めてくれてるの?」

「え、えと、よく分からない。」

「分からない?」

滝川君は不思議そうに私を見ている。

そういえば今日は図書室に誰も来ない。

滝川君が当番の日は結構ある意味賑わっているのに。


「ねぇ、今日変じゃない?」

「……なに?」

滝川君はまだ私の右腕は離さずにいた。

「30分も経つのに誰も来ないなんておかしくない?」

そう言うと彼は少し笑って、


「鍵閉めてるから。」


私は入口の方を見た。

ドアの鍵は本当にロックされていた。

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