第6話

この場の空気を通常モードにしてしまうこの2人は呑気なだけなのか、わざとなのか


陽向なんて、巻き込まれたくなくて5歩ほど引いてこちらの様子を伺っている。


巻き込まれたくない、その気持ちは分かる。



「椿、亜貴。やめとけ」


半ば呆れたようにため息が零れる藍も、波玖がいない今はどうしようもないがまとめ役にはいらねばならない。


呑気な総長もこの時ばかりはやけに落ち着いて、疲れきっている。


普段見せない姿に、…そう、椿は面白そうに笑う。


「こいつは人質だよ、好き勝手されたくなきゃ吐けよ」


ツツ…、と椿の指はしなやかに私の腰は上へ下へとなぞられる。


その行動とは裏腹に、奴の声は酷く重低音を効かせていた。


…勝手に私を人質にとるな。


「椿、殺す」


「後で殺されてやるからいまは黙ってろ」


「今がいい」


「里奈子ちゃん、いい子だから今は静かにしてようか」


まるで私が駄々こねている餓鬼みたいな扱いを椿と亜貴にされている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る