第5話

ぐしゃり、と藍の襟元を掴み陽向は詰め寄った。


「どうして、ハクちゃんのこと引き留めなかったの?」


納得いかない、

その理由はそれしかないだろう。


何を考えているか分からない、いつもと変わらない無表情の藍はそんな陽向から目を逸らすことはない。



「藍、」


ずっと黙っていた私は、藍を呼ぶ。



「私も、知りたい。波玖は、どこ行っちゃったの」



他人に対して情が移ったとかそんなことではない


でも、無関心ってわけでもない


見事なまでに藍に対し忠誠心を剥き出しにする波玖がどうしてあんな行動を取るのか、

その真実は私だって気になる。


「だってよ。珍しく里奈子も食いついてんだからさっさと話してみたらどうだ」


「これじゃあ、波玖がただ裏切ったっつー勘違いだけ生まれてこいつらも動かねぇぞ〜?」


椿、亜貴が便乗し言葉を繋げる。


ギュッと両隣から肩やら腰に手が回り、圧がかかる


なんて奴らだ…


「暑苦しいからやめて」


愛煙家の椿と亜貴をキッ、と睨みつけるが効果は皆無。


「両手に花で贅沢言ってんなよ、なぁ里奈子」


この椿のニヤリと笑う時はくだらないことを考えてる時だ。


腰に回されているこいつの手をギュッと抓る。


次いでに、「なーんだよ、照れ屋な里奈子ちゃんも可愛いじゃねぇの」ってほざきながら肩に回されている亜貴の手を抓っとく。

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