第2話

NiGHTSの溜まり場を去ったあと、


もう二度と来ることは無いと誓ったはずのこの場所に再び足を踏み入れた。


いつかの時以来の横並びで、赤い瞳を隠すようにしてフードを深くまで被ったままのソイツと殺風景なその廊下を歩く。




「俺ね、波玖のことは許さない。この先も、絶対に」



確固たるその意思は、もうずっと他者の力では崩されることはない。


そうさせたのは、紛れもなく俺自身だけど。



「うん、知ってる」


「この件が片付いた時、波玖を俺の好きなようにしてもいいよね」


「ご自由にどうぞ」


あんたの、泉の気が晴れるなら


昔から人でも物でも、執着なんてしなかった

それは、自分の命でさえも。

自分が生きてたって死んだってどうでもよかった。


「…もう少し自分のこと、大切にしてあげたら良かったのに」


「どうでもいいよ」


「ずっと俺も、アイツもそんなお前のことが心配で仕方なかったんだよ」



ある扉の前で、足が止まった。



ーー…藍さん、俺は…


心の中で、言いかけた言葉を無かったことにしてそっと飲み込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る