038.

第31話

春は満開に咲く桜並木は、夏の今緑色の葉のトンネルが作られており、この丘の上に繋ぐ砂利道を愁と歩く。


木漏れ日の光がとても綺麗に、私と愁の影を形成する。



蘭高へ編入した日は私一人で行ったが、いつもはこうして愁と行くことが多かった。


なんだかんだで仕事の都合をつけて、毎月付いてきてくれている。



段々と見えてきたのは、木目調に出来た建物入口前の門に悠々と煙草を吸いながら待ち構えているひとりの男。



「来たか」


この施設園の長を任されている男。



両サイドの刈り上げの黒の短髪に、現役の頃よりは雰囲気も人相も落ち着いたこの男。


元々私や愁の家で働いていただいぶな古株でもあり、もうこの数年はこの施設園で働いている。


「1ヶ月ぶりすね、響さん」



家の関係者の中で愁が敬語でさん付けする数少ない人物だ。



「おう、愁もリナも元気か」


ニカッと豪快に笑う響の後ろから聞こえてくる夏の太陽にも負けないぐらいの明るい声たち。

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