第30話

キングとNO.2の喧嘩に仲裁に入ろうとすれば、面子達に痛いストレートを巻き込まれて食らう。


今のは流石に痛い。

みるみる内に、面子達の顔には痣が出来てくる。

授業どころじゃないはずなのに教師陣は誰一人この騒ぎには駆けつけない。



「NO.1とNO.2が喧嘩って、チームは仲悪いの」

本来ならこんなことあってはならないだろう。

チームの面子に顔が立たないはずだ。



「どっちかっていえば仲良いんじゃない?喧嘩するほど仲良しさんだって言うし」

あくまで客観的にそう言う天音の笑みは、日本人離れした綺麗な顔がグンと引き立つ。



「気になっちゃった?」

「別に」


あんたがここまで連れて来たんだろ。



「目付け役のアイツはこんな所にいねぇし。そろそろアイツらが来んじゃねーの、天音。」

帰るぞ、と言いたげな稜の言葉に、一瞬無表情になる天音は、

「ハイハイ。帰ろっか」

そう言った。


「じゃあね、里奈子。本当ならあんまここに長居なんて出来ないから、俺たちはここまでかな」


「お前も直ぐ教室戻れ」



もう一度言うが、あんたらがここに連れて来たんだろ。

どこまでも自分勝手な奴らだ。




ーーーガンッ!

「早くくたばれや」

人と物が勢い良くぶつかるような物凄い音が聞こえ、物騒な言葉の先へ私は顔を向ける。



教室の扉にキングが突っ込まれた、らしい。

キングとNO.2はそれこそお互いの頬に傷をつけているも、息切れひとつしない。

関東最大規模の連合軍の頂点に立つ奴らだからこそ流石ではあるも、こんなに血の気が多いとは思わなかった。

「上等だ」

そう呟いたキングは再び立ち上がった。

お互い容赦なく、どちらも潰れる気配はない為、永遠とこの喧嘩は続くんじゃないのか。

もう、周りの面子はボロボロだ。




「ねぇ、」

ー…あんた達が止めてやれば。


そう言おうと、天音たちの方へ再度顔を向けた。


…が、つい数秒前まで私を両サイドで挟んでた天音と稜の姿はない。

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