第8話

翌朝、チカは普通に帰って行った。

アタシが作った朝ご飯を食べて。


「一体何しに来てるんだろ…」



アタシは片づけを済ませると一限目の講義に間に合うように電車に乗った。





――――…



「みおチャン、今の講義のノート貸してくれない?」



「拓実君、どうしたの珍しいね?」



早瀬拓実君は恭子と高校が同じで紹介され知り合った。

二人は付き合ってはいない。

まあ…アタシとチカみたいな関係。

恭子が彼を好きかは知らないけれど。



「夕べ恭子と飲んでたらすっかり遅刻して。でもアイツちゃんと講義受けてたよ、ザルだよ、アイツは。」



拓実君は笑いながら言った。

髪をブラウンに染めている彼は柔らかい雰囲気をもつ。

黒髪のチカとはまた違った艶っぽさを持っていた。



「はい、試験近いからなるべく早く返してね?」



「うん、ねえこの前のノートも持ってる?」



「え?それは…」



アタシはバッグのファイルを取り出す。



「持って来てない。家だわ。」



「あ…そう。じゃあちょっと帰りに寄ってもイイ?」

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