第26話
「おいおい・・・どうやったらこんなことになるんだ?」
教室に入ってきて早々に、神楽は深い溜息を付く。止めに入った男達が声を上げ止める様に説得すると、仕方なくめんどくさそうにしながらも悠と翔の仲裁に入る。
私の手だけしっかり掴まれて止めたのはなんでだろうね!!
「こうなったのはお前の責任でもあるからとっとと教室直せよ。授業始めることもできないしな」
既にホームルームは終わり授業開始時間になっていた事に神楽の言葉で気が付いたので、やけくそだったけど見た時より綺麗にしてやったよ!!理事長より直すの上手くなってる気がする!!
やけくそのまま教室を直している事にその場に居る全員が気付いて居た為特に文句を言う事も無く思ったよりも早く修復が出来た。それを見ていた神楽は感心していたが一方力の強さで今度学園内で苦労する事になることを悟り困った表情で終始見守っていた。全てが元に戻ったことを確認すると
「お前等がいると授業を始められないからな」
という良く分からない理由により出入口の扉へに向かい強制的に追い出される
「あー…それからお前ら理事長室に行けよ。呼び出されてるからな。担任の言うことは聞いとけよ」
言い返す暇もなく、そのまま勢いよく廊下に押し出され
「理事長室に行く前に治癒室に寄って怪我直してから行けよ。後、治癒室に着くまで力使うなよ」
扉を少し開けたまそう言い残し直ぐに重い扉を閉めた。強引だったのが気になったのか、はたまた担任だということに驚いたのか少しの間翔と一緒に固まっていた。
その後直ぐ神楽に言われた通り治癒室へ・・・行ける訳がないよな!!
仕方がないと言った様子で翔が歩き出したため、こちらも同じく仕方がないと後に続いた
一階へ降り、下駄箱を正面に右の階段へと進んで行く。治癒室は、本部棟一階にあり一周している廊下の反対側にある。
つまり、目が覚めた仮眠室と同じ階にあるのだ。それ知ったの本部棟についた時だったけどね…もう少し説明して欲しい!!
仮眠室から高等部二年SS塔までと全く同じ道のりを歩き、ここへ来た時とは反対側にある廊下に繋がる通路へと歩いていき通路を出て直ぐ右へと曲がり正面にあった大きな部屋を通り越して直ぐの‶第七治癒室‶と書かれた前で立ち止まった。
仮眠室の近くには認証する為の大きな扉と機械があったけどこっちにはないのかよ!!ややこやしい!!
扉に書かれた文字を確認するとおもむろに翔がブレザーの左内側に手を入れると金属同士が擦れる音が鳴り少しして一つの鍵を取り出した。
持ち手部分は白く、鍵部分は黒色のそれをドアノブに近づけるとカードの形に変わり同時にガチャリと鍵が開く音が響く。
ちょっと待って。今どこから鍵出した?てか、鍵からカードに変わるとか聞いてないんだけど…!まぁ言われてないから当たり前なんだけどさ!
悠の声と突き刺さる視線が気になってはいるがそれを無視しドアノブから鍵を離し白と黒の鍵に戻ったことを確認すると再びブレザーの左内側に手を入れる。先ほどよりも大きい金属同士が擦れる音がするが鍵を取り出した時とは違いカチッと鍵を開く音が聞こえた。・・・なんか翔ちゃん焦ってる?
「翔ちゃんそんなに焦らなくてもいいんだよ…」
と生暖かい表情でそう言えば
「お前のせいだろーが!!視線で穴開けるつもりかよ・・・入るぞ!」
悠の何とも言えない視線に耐えかねていた翔は、乱暴に扉を開けると治癒室の中へ入って行った。
扉はちゃんと開けたままにするんだ・・・って
「結局説明は!?」
翔の後を追うように慌てて中へと入るが、部屋に入る時に一瞬治癒する時と同じ感じがしたけど気のせい?…気のせいか!と治癒室を見まわせば仮眠室と配置もさほど変わらないのが直ぐに分かる。
入って左側にはスライド式の扉がありその奥にベッドが置かれている。右側中央には黄色を基調とした一人用の椅子と机があり扉近くには冷蔵庫が置かれている。
なんかこの学園って椅子とか机とか妙にカラフルなんだよな…後冷蔵庫は仮眠室に置いた方がいいと思う、うん。
と翔が突然ブレザーを脱ぎ此方へと投げ捨てた。驚いた悠は反応が遅れ掴むことが出来ずブレザーが頭の上に振ってくる形になってしまい視界が遮られる。
「わざわざこっちに投げる必要ないと思うんだけど!!?」
「鍵がどこにしまってあるのか気にしてただろ。左の内側にポケットが付いてんだよ」
微笑を浮かべながらー正確に言えば笑いをこらえ肩を震わせているがーこちらを見る翔のその言葉に頭の上に乗っているそれをテーブルの上に広げ捲ればこちらから見れば右に見えるが確かに左側にしっかりとした内ポケットが付いていた。そっと内ポケットを開け中を確認する。
翔ちゃんが使ってた鍵以外にもなんか大量に鍵が入ってるんだけど…なにこれ
「SSクラスに入る前のテスト順位が一位だとSSクラス全員に配られる鍵を、俺達はSSキーって呼んでんだけどな。そのSSキーを管理させられんだよ。他のクラスにも似たような鍵が配られるんだが、それは全部スペアキーって呼ばれてるな」
めんどくさそうだな…って事はこの大量の鍵がSSキーって事か。クラス全員分とかこれ見分けつかないだろ!!SSキーって相当特殊な鍵なんだろうな…
「見分ける必要ねーんだよ。カードとSSキーにそれぞれ共鳴し合う方陣が別で付加されてるからな。連動ともいうらしいが俺にもよく分かんねーんだよ」
分からないのかよ!!
「あー、その付加されてる方陣を全部少しづつ変えてるって事になると思うんだけど・・・理事長何やってるんだよ」
その言葉に深く同意したのか翔は何度も頷き、話を進める
「それにだ。理事生徒会の会長になるとSSになると貰える鍵以外にも理事長が管理している部屋も全て開けることが出来るマスターキーってのが貰えんだけどな、その鍵割と特殊だろ?SSキー管理もそうだけどなその特殊な鍵を仕舞う為に内ポケットがある訳だ。」
聞きながらも内ポケットの中身を見て一人納得している
「あー・・・SSキーだっけ。それは直接的な付加に耐えられないから方陣で形状変化を付加してその特殊な鍵には直接、主に形状変化を付加したって事。他にも色々付加してると思うけど、いや、本当に理事長何やってる訳!?」
「俺も渡された時は流石に引いたからな・・・」
先ほどまで変わった様子もなく話していた翔の声が突然とても眠そうな声になったため不思議に思い振り返ると翔ベッドに向かいうつぶせに倒れ込んでいた。なんで!?
「翔ちゃん!!?」
慌てて翔に近づくと突然起き上り靴もそのままにベッドに潜り込んでしまった。こちらの呼びかけに反応もない。これどういう状況…?
突然の状況に理解が追い付いていかずベッドにもぐりこんだ翔をしばし見つめ、気が付いた
「寝てるんだけど!!!?」
「痛い痛い痛い」
「それは俺の台詞だ!お前は痛くねーだろ!少しくらい手加減しろよ…」
手当てしてるこっちが痛くなるくらいには怪我が酷いんだよ!・・・まぁ、私がやったんですけどね!
「翔ちゃん五月蠅いよ!手加減しろって言われてもする訳ないでしょ」
椅子に座っている翔の背中を見つめながらベッドと反対側にあった方陣から突然枠用に出て来た包帯で腕上部から背中にかけて強く締め結ぶ。
まさか方陣から突然包帯出てくるとは思わなかったな…これも理事長が管理してるだろうから納得したけど
苦しそうな声が聞こえたが知らない振りする。
かなり強めに締めてやった。・・・こんなくらいしてもいい気がするくらいには驚かされたから。
「おい目が死んでるぞ」
「・・・まさか突然翔ちゃんが寝るとは思わなかったよ」
「説明したと思ってたんだよ!!」
「鍵の説明しかしてないから!!」
翔がぐっすり完全に深く眠ってしまった後、翔の身体が光り始めたのを見て眠ってしまったのが治癒のせいだということに気が付いたのだ。
治癒室には四方に治癒を付加された方陣があり、部屋に入って来た者の中で負傷者のみを初期段階で治癒させさらの負傷者の傷が深い場合強制的にベッドの中へ入り眠らせることで治癒をする術式が組み込まれていたため翔はベッドの中に入ってそのまま寝てしまった。
しかしそれを知らないまま突然眠りについてしまった翔に只々困惑していた悠だが、部屋に入る際の違和感を思い出し翔をそのままに部屋を見回すと各隅に方陣があり、治癒が発動していたため直ぐに落ち着きを取り戻し翔の目が覚めるまで椅子に座って待っていたのだ。
待ってたって言うよりかは待つ以外の選択したがなかっただけなんだけど…!
実際、翔は15分程ベッドで寝ており起きて早々また悠に殴りかかられ危く怪我が増える所だったのはここだけの話しだ。
まぁその傷も直ぐに治りましたけどね!!怪我の酷い所は辛うじて治ってるみたいだけど。
「今から説明すればいいんだろーが!」
そう言うと翔はおもむろに立ち上がりベッド側も移動しブレザーの胸ポケットからカードとを取り出す。続いて内ポケットから金色のSSキーを取り出すと机の側面を触り始める。
「ここはちげーな。どこにあったのか覚えてねーんだよな…」
何かを探している翔はしきりに机の側面手当たり次第に触りまくる。と、椅子が置いてある場所とは反対側に回り座り込み側面を触り何かを確認している。
一見只の机の側面だが触るとしっかりとした凹凸がある。そこに右手に持ってたSSキーを近づけると凹凸が変化し鍵穴になる。
そのままSSキーを差し込み時計回りにねじを締めるように回しながら左手で机に置きっぱなしだったブレザーを手に取る。何度か回し、SSキーを抜くと机の上中央に半透明の四角形の機械が現れた。
なんかあの、私が壊した扉にあったカード翳す機械にそっくりなんだけど。
でもこれどう見ても何か入れるためのケースというか入れ物?ーどっちも同じか!-にしか見えないんだよね・・・蓋ないけど
机の上中央に半透明の四角形の機械が出たことを確認するとケースの間に滑り込ませるようにしてカードを入れた。するとカードは半透明な四角形の機械の中に浮き高速で回り始める。
「回るんかい!!」
そんな此方をよそに翔は懐かしむ表情でそれを見つめている。
やっぱりこれ機械なんだな!!もうなにも驚かないとか思ってたけど、十分驚くわ!!そして翔ちゃんはいったいこれに何の思い出があるんだろうね!!
五分ほど経った頃だろうか。機械の中で高速に回り続けているカードがピタリと止まった。
半透明な四角形の効か内側の底、両側に方陣が出現しさらに外側の上部にも方陣が出現すると机上全体に地図が浮き上がる。
翔は机上全体に浮き上がった地図を指を左右に移動させていく。
「これは校内の地図だ。学園全体の地図から校内地図、部屋の見取図まで見ることが出来るんだよ。入学したばかりのころはよく治癒室に行ってたからな。それで何回か見たことがあったのを思い出したって訳だ」
それ先に言って欲しかったんだけどな!!まぁ、翔ちゃん昔から説明下手だったからな…どうせ今回も説明することが多すぎてどう説明していいのか分からなくなったんだろうし
「おっと・・・。これだな」
指を動かす手が止まる。浮き上がっている地図の‶本部棟1階校内地図‶と表記されている。地図は悠が居る場所が正面に来ているようだ。
すぐ下には玄関ホールの文字と小さく南と方角が表記され一番上には集中治癒室の文字と北と同じく方角が表記されている。
なんか凄い詳しく作りすぎじゃ…詳しく書かないと男子校で生活してても迷うからだったりしてな!!
あながち間違いでもない事を思いながら地図を見つめる。
「俺は説明するのは苦手だから地図見て憶えとけよ。」
翔はそう言いながらブレザーを羽織る。説明しないのかよ!!
「えっと・・・」
本部棟一階は、廊下がロの字になっておりロの字の廊下の場合内側が吹き抜けや中庭になっており外側に部屋がある場合と内側に部屋がある場合が多いが男子校内は内側と外側に部屋がある。
南側にある正面玄関ホールの両側にはそれぞれ第一仮眠室…と文字が続き各四部屋まで構築されている。
玄関ホールの目の前には廊下を挟み螺旋階段があり、左右にそれぞれ職員室の文字がある。
左には黄緑色で第一職員室と特別学級と初等部専用、右には黄色で第二職員室で中等部専用の文字。
そして螺旋階段の目の前には再び廊下が挟み集中治癒室の文字があり集中治癒室の両側には第七治癒室…と続き各三部屋で構築されている。
仮眠室と治癒室が同じ数ある為、玄関ホール左が第一職員室、右が第二職員室が管理している。
ようするに、右も左も同じ部屋数で同じ1~7の数字ってことか。同じ数字しなきゃよかったんじゃ…おかげでややこしいわ!!
「・・・覚えられそうにないんだけど」
絶対すぐ忘れるやつだよこれ。・・・覚えるのめんどくさいってのもあるけど!
「どの道覚える気ねーだろ!」
半立体地図と睨めっこしていると、翔に図星を付かれる。
「バレた」
苦笑いをしながらそう言うと呆れた表情で翔がため息を漏らす
「・・・そろそろ理事長室に行かねーとな」
翔は半透明な四角形の機械を触り地図の表示を終了させ方陣が消えた後カードを抜き出すと鍵穴が無くなり見た目はただの机の側面へ戻った。
鍵使わなくても元に戻るのか…もしかしてここの機械全部そんな感じーどんな感じだよーだったたりして!?
軽く周りを見渡して確認作業をしてる翔を背にそんな事を考えながら扉を開け先に治癒室から出る。
「鍵は寮と同じだからな」
さも当たり前の様に悠の疑問に答える。寮と同じってあの勝手に施錠切り替わるとか言ってたやつ?
「何処までも最新か!!」
翔も治癒室から出ると静かに扉を閉める。扉の音と同時にカチッと鍵が閉まる音を確認すると理事長室に向けて翔を先頭に歩き出す。
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