悪魔の世界へ

第23話

暗くて寂しく悲しい空間で満たされた場所にずっと居たい。浮上するのは嫌だ

『もうここまで来れるようになったのね・・・』

関心かそれとも困惑か。そんな感情が入り混じった声が聞こえる。・・・どこか自分の声に似ている気がする

『けれど、まだここへ来ては駄目よ。来るべき時ではないの。』

優し気な声の中に決してここへは来てはならないという拒絶を感じ取れる。ふわふわとただ漂うだけの存在になりたい

『早く帰りなさい。・・・もうそろそろ起こす方も可哀想に思えるもの』

誰なのか何なのか分からないそれの声が聞こえなくなるとふわふわ漂っていた者が突然引っ張られるような感覚へと変わり意識が浮上していくそんな感覚が・・・

「いつまで寝てるつもりだ!」

「おはよぉ悠ちゃん!」

「起きたみたいだねー。おはようー」

「・・・」

耳からの情報と死角からの情報が同時にやってきた・・・ちょっと待て。なんでこいつらが私の部屋にいるんだと言うか不法侵入・・・駄目だ。くっそ眠い

こちらの顔を覗き込む様に翔。そしてクリーム色の髪の長い男と薄桜色の髪の短い男はそれぞれ笑みを浮かべ翔とこちらを見比べておりマッシュルーム型の髪の短い男はまだあ眠いのだろうか。俯き真顔で真下をボーっと見つめている

「お前・・・目据わってねーか?」

悠の表情にいち早く気が付いた翔が問いかけるが返事が無く起き上る素振りさえない。不安になり名前を呼ぶと無表情のままむくりと起き上った。

なんか変な夢見た気がするけど内容全く覚えてない・・・眠い

「寝顔可愛かったよー」

「かわいかったぁー」

起き上ったことに目覚めたと勘違いしたクリーム色の髪の長い男と薄桜色の髪の短い男はからかうように言葉を発する

「かわいかったよぉ!」

「本当にね~」

「おいやめろ!」

悠の異変にいち早く気が付いた翔が止めに入るが既に遅く小さい声でブツブツと何か言っている。否唱えだした

「…として集え。つみぶかきものに・・・鉄槌を」

やはりまだ目が完全に覚めた訳ではないようで所々ろれつが回っていないが、最後の言葉のみ低く唸り声で唱え終えた。

「こいつ、寝起き最悪なんだよ!!」

「えぇ!?」

「それなんで先に言わないのかな~?」

「次は何が始まる・・・」

翔の叫びに薄桜色の髪の長い男とクリーム色の髪の長い男が悠から距離を取る。マッシュルーム型の髪の短いは既に何かに疲れている様子だがしっかりと間合いを取っていた。

いつの間にか右手に剣を持っていた悠は

「」

淡々と剣を振りかざした。微かな声が翔達に届く前に、稲妻が部屋中を駆け巡ったと同時に翔達の悲痛な声がこだまする

・・・やべ。完全に寝ぼけてたわ

翔達の悲痛な声で完全に目を覚まし目の前に広がる光景に直ぐ察し呆然とそれを眺める

『やっぱりまだ半分夢の中ね』

その声の主に悠は気が付かない。だが、剣をcardの中に戻しながら悟った

今日もろくでもない日になる、と。


「勝手に入って来るとか何考えてた訳!?お蔭でこっちは目覚め最悪だわ!!」

「だからと言って俺を殴るんじゃねーよ!」

「雷だけじゃ足りないかと思って。」

稲妻がしばらく部屋中をはしる間、逃げ惑う翔達を完全に無視をして朝の準備を始めた。それを見ながら笑っている所はまるで悪魔の様だった。

幸い、部屋は頑丈に作られていたためそれほど傷もなかったが念のため床にへたり込んでいた翔達を笑いながら修復を行った。その修復は、理事長が集会場で天井を治した時と同様のやり方だ。

部分修復ならできるけど、全体の修復が出来るか不安だったからついでにやったら普通に出来て驚いたけど翔ちゃん達全く気付かずに浸すら呼吸乱しまくってたもんな・・・

準備が終わった頃には既に朝食の時間が終わっていたが、中々起きないのを知っていた翔が歩きながらでも食べれる物ー朝食で出されたものだろうーをこっそり持ってきていた為鞄を背負い教室へと向かったのだった。パンとおにぎりを10分も経たずに食べながら教室へと向かっているが、相変わらず言い争いになっていた。・・・そんなに言い争いして、たな。うん。小さい頃よく言い合いしてた気がするわ。

「止めろ。お前がい言うこと全部マジにしか聞こえねーからな。そもそも俺は部屋に入るの止めたんだからな」

止めたってどうせ最初に言いだしたの翔ちゃんだろうに。朝から青い表情の翔だが、他の男達はさも無関係化の様に振舞っていた為哀れに思い仕方なく

「次はないからな!後、他の三人に売られてるけどいい訳?」

「分かってる。・・・あいつらああいう奴なんだよ」

「いい意味で?」

「いい意味で、だ!」

クリーム色の髪の長い男と薄桜色の髪の短い男は腹を抱え笑っているが一名、クリーム色の髪の長い男は息が出来ない笑い転げそうだ。

あれその内本当に息しないまま転がりそうだな!マッシュルーム型の髪の短いは静かに後ろをついてきている・・・朝起きてからこの間本当に何も話してないんだけど。ちゃんと声帯あるのか??

そうこうしていると、翔達と同じ制服を着た生徒達とクラッシックでシンプルな制服を着ている生徒たちが多くなり始め次第にクラシック出シンプルな制服を着た生徒たちが右へ右折し始める

「お前クラスの場所知らねーだろ。あんまりフラフラするなよ。直ぐどこかに行くんだからよ・・・」

片手で頭を抱え溜息を付く翔だが、まって。異常に顔が近い。

「分かったから・・とりあえず離れて。顔が近い」

これから通う専用の校舎ーここでは棟と呼ばれているーが近づくと周りには翔達と同じ制服を着た生徒だけになっていた。やがて本部棟の半分ほど来た道を右へ曲がり直ぐの道を左に曲がると見えて来た建物。・・・・とても校舎に見えないわ

「校舎・・・デカいね」

「今更かよ。昨日も見ただろ?」

「暗かったし見てる余裕あったと思う訳?」

問いかけに翔は‶ないな‶と即答する。

ここ男子校では、能力別にクラスが分かれている。最も優秀な者達が入るSSクラスから続きA、B、C、Dクラスと続く。

SSクラスとAクラスは寮と同じく学年が上がるごとに棟が変わるようになって居る。これはAクラスにも該当するがBクラスより下のクラスは寮と棟は各等部ごとしか変わらない。

何故このようなシステムになっているのか、それは悪魔が結界を破り攻め込んできた際に複雑かつ能力者をバラけさせることによって被害を最小限に抑えるための策でもある。が、悠はこの事を殆ど知らずにいる。何故なら

『あの大量の書類に書かれていることだもの。手帳にも女子校と同じ様に校則等々書かれているけれど、読んでいないものね』

彼女の声は、悠には届かない。

「・・・なんか寮と言い校舎と言いやっぱり男子校ってお金かける所間違ってると思う」

目の前には、一階部分が全てガラス張りになっており、太陽の光を反射してキラキラと輝いている。

三階はあるであろう円形の形をしたそれはガラス張りより上全てが白色に塗られ、正面には金色の校章が大きく描かれており翌々見るとlabyrinthと赤い文字が入っているがよく観察しなければ文字が入っていることさえ気が付かないだろう。

このlabyrinthという文字の色は初等部、中等部、高等部、大学部とそれぞれ決められた色で各SSクラスの棟、通称SS塔の校章に書くされている。A等~D等は校章のみ描かれている。

「校舎じゃねーぞ」

「棟って呼ぶ学校なんてここくらいだから!」

そう他愛もない会話をしながら棟へと近づく。そんな空気とは裏腹に、周りの見る視線が何処か冷ややかだ。・・・やっぱり視線感じるな。どうせ女だからとか思ってるんだろうな

「あれ例の女だろ?」

「ああ。あいつらに気にいられただけで特別扱いされやがって」

わざと大きな声で批判する声やヒソヒソと話す声。

寮を出てからすれ違いざまに言われており翔は気が付いていなかったがクリーム色の髪の長い男と薄桜色の髪の短い、マッシュルーム型の髪の短い男は聞こえていたようだったがあえて聞いていない振りをしていた。

批判する声・・・分ってはいたけどヒソヒソ話してるのはもうそれ普通に話してる声だし大きな声でののしってくるやつらはわざとそう言えば私が何かするとでも思ってるやつもいるみたいだし。

知らないからな、私が心の声が聞こえるって。

中々制御難しいから嫌でも声拾うんだよね。

中と外のダブルパンチってやつ?ま、気にしないのが一番。こういうのは馴れてるし

「あいつの噂聞いたか?」「あいつ両親殺したんだってな」「マジかよ。」「本当だとしたら最悪だよな」「よくのうのうと生きて行けるよなって感じもするけどな!」

ゲラゲラと笑い声が響く。お前等の方が悪魔よりよっぽど悪魔だと思えてくる。・・・だけどその会話まるで女子のようだな!

「おい、いいのかよ」

これだけ大きな声を出していれば聞こえるだろう。嫌でも可笑しな雰囲気になっている事に気付いている為、翔の眉間には皺が寄っている。クリーム色の髪の長い男達は飄々としている為感情が良く読み取れない。

「いいよ別に。嘘でも本当の事でも言いたい奴は言わせておけばいいよ。・・・ウザいな」

感情が沸き上がってくるのを抑える。・・・本当にウザいのだけは確かだけど

「翔ちゃん。クラスって昨日翔ちゃんが荷物取りに言った所だよな」

「・・・まさか一人で行くつもりじゃねーだろうな」

「えー?」

心配、それか怒りを含んだ声の翔だが、悠は首を傾げる。気にしていないというように。

ま、結局誤魔化せなくて翔ちゃんに腕を掴まれ引っ張られてるけど!!

「ここは俺達高等部SSクラスの生徒専用の棟、つまり校舎だ。SSとAクラスは棟と寮は一学年上がるごとに移動するようになってるからな。中用の靴に履き替えるんだが、カードにナンバーが出てるはずだ。」

翔の言葉に手帳に入れていたカードを見る。覗き込むようにして翔も確認をしているその表情は昨日寮で隣の部屋だった時と同じだった。・・・これ翔ちゃんと同じだな

「また同じかよ・・・カード無くしても予備として鍵についているカードも使えるから憶えとけよ。お前が壊した扉も直ってるみたいだからな」

「・・・あれは仕方なかったんだよ。」

私のせいじゃなくて悪魔が原因だから。うん。

「お、おう」

なにを動揺するのことがあるのか、言葉を詰まらせながら気まずいのか咳払いをする。

「昨日カードも使ったみたいだしな・・・機械の使い方を教える必要はねーな。あぁ、寮にあったカフェテリアを小さくした休憩室は入って右側に続く階段から行けるようになってるからな。カードがあればカフェテリアから寮での暮らしまで全部男子校持ちになってるからな。無くすなよ」

眉間に寄っていた皺はいつの間にか消えていた。・・・ようするに昨日、教室前から下駄箱に来たまでのルートそのままで行けばいい言ってことか

「・・・先行ってる」

翔が掴んだ手をやんわりと振り払いガラス張りの扉を開ける。・・・ここは手動なんだな、冷静に思いながらも下駄箱へと足を進めた。

「おい悠!!」

翔ちゃんが私の名前を呼んだ後何か言っていたけれど、その何かを聞かぬまま昨日と同じ下駄箱の前に立ち手に持っていたカードで鍵を開け鞄から中用の靴を取り出し履き替える。

外用の靴を中に入れ閉めるとバンッと派手な音がしたがそのまま中央右の階段を上っていく。登り切り折り返し再び階段を上ると、大きな扉が目に入る。・・・昨日壊したのにもう直ってるのか。

昨日と同様に、天井に枠組みがあり、細かい装飾が施されている。その真ん中に頑丈そうな厚い扉がある。それも装飾が施されており扉前の右横にはカードを翳す四角形の機械がある。透明なケースに置くと、ピピピ…と音が聞こえ、

≪認証コード確認。本人の使用認証確認…確認完了。認証済みの為ロックを解除します。≫

そして昨日同様に、目の前に合った扉が消える。カードを胸ポケットに入れながらその扉を通る。

さっきの声が、木霊する。・・・あいつ両親を殺したんだってな。どこでそんな情報を知ったのか不思議な所ではあるけど。確かに私は両親を殺した。

そうだ。私は両親を・・・本当の両親ではないが育ての親を殺した。いや、でもそこにいたのは、ジーンだった・・・私は何もできない只の、只のなんなのだろう。

やっぱり今日は、ろくでもない日だ。

分かっていないのなら踏み込まないで欲しい。踏み込んだ先がどうなっているのかなんて分からないんだから。

「はぁぁ・・・」

何でこんな気分に私がならないといけないんだ?・・・翔ちゃんの言った通りかなり苛立ってるわ!!

気が付けば、昨日翔達が入っていた扉の前に来ていた。扉は開いていないが中から聞こえる音はどこか騒がしい。・・・ここって本当に何でもデカいな。

深呼吸した後扉に目線を移して、少し強めに扉を開け・・・ガタンッと音がした直後ボキッと腕が鳴る。痛い・・・引くタイプの扉じゃないのかよ!!

気を取り直し、強めに扉を押した。

ちょ、まっ・・・重いな!!

身体を入れ、背中で扉を支えながら中へ入ると目の前に広がっていたのは無駄に広い空間に、一つ一つが豪華な机と椅子が前四列、横4列で並んでいる。

特に目に入って来た机は、理事長が使っている机の上部分を全て下に取り付けた様な、いびつな形をしている。両横側と前側に中途半端に下が隠れるように付いている。・・・まぁ、全部隠すよりかはいいの、か?

そんな私をじっと見ているのは・・・昨日、確か夜ご飯を食べていた奴らだな。

「お、今日からよろしくなー」

散々悪口や陰口を言わるものだと思っていた悠だったが、扉を支え手を引きその者の席であろう場所まで連れていってくれた男に、拍子抜けした。

髪は上部部分に丸みをつけており、下部に段差を入れ襟足を軽くさせたマッシュルーム型の髪をしており、襟足部分が狼の毛のように見える自然な髪型をしており、髪色は明るいこげ茶色。

目の色は柘榴色。服は翔達が来ている制服と同じだが、白色のブレザーはボタンが全て開いており胸元の校章部分にはバッチが三つ付いている。二つ目三つ目のバッジのモチーフはホテイアオイとライラックだろうか。周りを見る限り、珍しいく疎ましい気持ちはある物のさして期には止めていないようだ。

今目の前にいる明るいこげ茶色の襟元が狼の毛の様な髪の短い男は悪意は感じられず、何方かというと好奇心、興味津々と言った所だろうか

・・・ちょっとほっとしたかも。悪意はあっても気にしていないならそれでいいけど、このTHEイケメンって感じの割と普通な感じのするこの男私にそんなに興味があるのか・・・握手してる力が強いんだよな。そろそろ手が限界なんですけど

「あ、う…」

‶うん。よろしく‶と挨拶を続けようとし、あわよくばさっさと手を放そう。と、その瞬間。殺意が背中に走った。握った手を振り払い辺りを警戒する。・・・何処だこの殺気は。どこから来てる?

「どうしたんだ…?」

突然の出来事に困惑したた様子で目の前にいる自然なマッシュルームに狼の毛の様な襟元をした髪の短い男は呑気に問いかける。様子を見ていた周りの男達も集まってきているが、どうやら心配はしているみたいだ。先ほどの殺気は無くなっていたが微かに、悪魔の気配がする。少し警戒を解くと

「また殺気・・・?」

部屋の中にいる気配は一切無い。・・・外。しかも上空か。はぁ・・・

自然なマッシュルームに狼の毛の様な襟元をした髪の短い男を押しのけ机に這い一番近い窓に手を掛ける。四つある窓の丁度二つ目の窓を開けると、警戒しつつも気配を探す男達の姿。・・・相当混乱してるみたいだな・・・本当は今から使う術はあまり簡単にしない方が効力続くんだけどそうも言ってられないか

机の上に立ちそのまま外へと足を踏み出したと同時に

「浮け!」

と叫ぶと落ちて掛けた体が水の上に居る様な形で宙に立ちそのまま居るであろう場所まで上がっていく。

「危ないぞ!」

「何をやっているんだ!!」

等々男達、否、今日から一応クラスメイトになる者たちの声が届く。え?心配してくれてる!?でももう浮いてるし!!

「だ、大丈夫!!」

と大きな声を出せば、聞こえたのか全員首を横に振っていた。・・・大丈夫なんだけどな。そう思っていると直ぐに、目的の場所に着く。

・・・懲りない奴だな。

昨日の今日でもう来る??早すぎない?絶対に魔王に怒られてる最中に逃げ出したよな!?


「そこで、一体なにしてる訳?・・・ルシー」


本当に呆れるって多分今みたいな状況のことを言うんだろうな・・・

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