件名:きゃー((o(^∇^)o))


本文:

さっきパパから龍兄たつにいのプレゼント渡されて、びっくりして早速開けました!Σ( ̄□ ̄;)な、何でしょーかっ、これは!!(゜ロ゜ノ)ノ!!

ど、どこにつけて行けばいいんでしょーか

(°∀。)コンラン💫

去年貰ったブルガリも大事に大事に使わせて貰ってるのに。これって、龍兄に悪いから調べないけど、きっとメチャメチャ高いよね。

私の本能がそう告げてます(確信)。

でも嬉しい。毎年忘れないでいてくれるのが凄く。なので。今年も誓います。

文兄ふみにいと仲良い時も喧嘩しちゃった時も、取り持ちは任せて( ^-^)∠※。.:*:・'°☆

追伸:時計は二つとも嫁入り道具にします♪♪♪


麻紗美



可愛い。

津島の叔父貴のコワモテからは想像出来ない容姿の可愛らしさ(女の子はパパ似♪は、津島家では適用外だ。一説ではお腹の子が女の子とわかった時点での姐さんの死に物狂いの神社仏閣への願掛けという、まことしやかな伝説(?)が伝わっている。そんな事を言っても姐さんは叔父貴にベタ惚れの押し掛け女房だが)もそうだが、性格が基本的には素直で、純真。

極道の娘に生まれれば、それなりに苦労はあったろうに。


早速、打ち返す。


件名:こちらこそ

本文:

可愛いメール有難う(⌒‐⌒)♪

麻紗美ちゃんのメールはいつも心が和むよ。

麻紗美ちゃんも知る通り、ウチは男所帯で可愛いものに飢えてるの(笑)。プレゼントだけど、気にしないでいいよ。お兄さんはちゃんと麻紗美ちゃんの誕プレの為に毎年貯金してる(ごめん、ちょっと嘘(^_^;))から。

誓い、嬉しいよ。

文親さんと俺の取り持ちなんて怖い事(笑)、麻紗美ちゃんしか頼めないからね。何はともあれ、喜んでくれたなら良かった♪


追伸:嫁入り道具だったらまた買ってあげるから、頑張って普段使いにしなさい♪

でも今の歳で嫁入り道具って言ったら叔父貴泣いちゃうから内緒でね。


龍兄より


「で、送信、と」


そう。

メールにも書いたが。

麻紗美ちゃんは『特別な』事が出来る。

文親を“文兄ふみにい”と呼び、彼から笑顔を引き出し、俺と文親が喧嘩すると仲裁などもしてくれる。

そんな事が出来るのは、この極道の世界でもたった一人、麻紗美ちゃんだけだ。

そういう意味じゃ、叔父貴の『血』は脈々と彼女に流れていると言える。


「さーて。そろそろ、あの人にも連絡すっかな。あんまりご無沙汰してると怖いから」


俺はスマホを持ち直す。

指先に力を入れてタップするのは、恐らく俺からの連絡を辛抱強く待ち続けているだろう文親の番号。


あれから色々あって。約一週間。

会えてないし、電話出来てないし、メールもしてない。

ここまで全く連絡取らないのは二人の付き合いの中では初めてだ。


「出て、くれるかなぁ?文親さん?」


知らず、口から出た独り言はびっくりするほど気弱で他人に聞かせられたものじゃない。


だから。


「はい?」


ワンコールで繋がって聞こえてきた想い人の声に。


「ひっ!ふ、文親さんっ」


なんとも間抜けな悲鳴を返してしまう。


「……。久しぶりに電話をかけてきたと思えば。どれだけ怯えてるの、龍哉?」


ため息と、呆れたような声ですら美しい、俺の恋人。


「龍哉?」

「はい」

「少しは落ち着いたの?そっちは? …まあ、早奈英さんと連れだってショッピングに行けるくらいには暇があったって事は知ってるけど?」

「!」


知ってる。

恐るべし。本当に恐るべし。紫藤文親。


「文親さん、あれはいつもの麻紗美ちゃんのプレゼントの為に…」

「いつもなら俺と行くのに?」

「……っ」

「…わかってるよ。そっちの“事情”からすれば組の若頭二人連れって状況は二度作れないもの」

「…ごめん」


いつもなら。二人であらかじめブランドを決めて、予約を入れて。個室であーだこーだと言いながら選ぶ。去年の麻紗美ちゃんへのブルガリもそうだった。

二人とは言っても、お互い、篠崎、黒橋両名を従えているのだから、完全な二人ではないのだが。


「…あんな道の真ん中で、わざわざ連れてったクラブのママにプレゼント渡すのも陽動作戦の一つでしょ、…どうせ」

「…文親さん」

「何年、一緒にいると思ってる?お見通しだよ、龍哉」

「文親」

「…大変だったね」


言葉は少ないけれど、それだけで伝わる。


「妬いちゃった?」


聞くと、少し拗ねたような答えが返る。


「妬くか、馬鹿馬鹿しい」

「…ちょっとくらい妬いてくれても…」

「…いいの?お前のせいでなんの罪もない一人の女が地球上から消えるよ?しかもあのママ、かなりの優秀な人材だよね。…シノギ(稼ぎ)が減るぞ、若頭?」


俺の耳に響いてくる今日の文親の声は優しさよりも意地悪が勝っているように聞こえて。


「妬かないとか、わかってるとか言っても、…やっぱりメチャメチャ怒ってるじゃん」


それが嬉しい。久しぶりに声を聞く、それだけで若頭の矜持プライドが飛ぶくらいには俺は文親が好きだから。

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