第29話

「ちょっと!何するの!タクシー行っちゃったじゃない!!」


アタシは通行人がいようが叫んだ。


「お金だって持ってるじゃない!ふざけるのも大概にっ……、」


そう若月君に詰め寄るとある事に気が付いた。



彼の手がアタシの腕を掴んだままだった。


アタシは急いでその手を振り解く。


若月君はそんなアタシを見て薄く笑った。



「酔いも醒めた?飲み直す?」


「そんなのしないわ、若月君と呑む理由なんてないし。」


アタシは彼に敬語で話す事を完璧忘れていた。



だって、冷静になんていられなかった。



若月君に、


触れたのが初めてだったから。

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