第27話
「ちょっと、若月君なにしてるの。」
「タクシー代持ってないんだ。」
ウソだ。持ってないはずがない!カードだってあるはずなのに。
「まだ電車もあるのにっ、」
「……ねえ、あの彼氏は一緒じゃないんだ?」
「はい?」
「だからさっきのヒト。」
「け、渓人は用事があって……、」
「ふうん、」
若月君はそう言って頬杖をついて窓の景色を見ていた。
息が詰まる。
こんなに彼が近くて、逃げ場がない。
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