31・バカな自分…

第31話

「いつものだよ。華ちゃん、佳彦」

「ありがとうございます。店主マスター


いつもの珈琲が運ばれて来て安心した。


「…男の佳彦に話すのは違うのかも知れない」

「なんだ?」


珈琲を一口飲んで佳彦の目を見て伝える。


「体調不良で良かったって今は思ってる」

「…そうか」

「…うん」


赤ちゃんでなくて残念だけど今の私では育てられない。

育てる自信がない。

佳彦と離婚・・してるのにもう一度ヨリを戻して一緒に育てたかったのも事実なんだけど…。


「佳彦…部長。私、会社戻ります」

「このまま半休なんだから半休取れ」


佳彦が珈琲を飲みながら私に伝える。


「…お言葉に甘えてそのまま休みます。プレゼン練り直します」

「あぁ。楽しみにしてるよ」


これ以上佳彦に絶望させない為に出来る事をしていこう。


〔沢井さん、一応ストレスだと診断するけど、生理がいつも通り来なかったからもう一度診察に来て〕

〔いつも通りに生理ですか…?〕

〔うん。まだ小さ過ぎて診断が判断つかないんだよ。期間を設けようか。2ヶ月生理来なかったら来て〕

〔…分かりました〕


そう医師せんせいと話したのは佳彦には黙っておこう。


「…な、華。大丈夫か?」

「あっ、うん?大丈夫」


慌てて繕って珈琲を、飲む。

佳彦が疑ってる目で私を見てるけど知らないフリをする。


「華、何かあるならちゃんと言えよ」

「佳…部長にそこまで迷惑はかけれません」


そう。

佳彦にそこまで迷惑なんてかかれない。

この先は私が責任持って取り組んでいかないといけない。


「俺は頼りないか?」

「えっ?」


佳彦が弱気発言をして慌てて顔を上げて見た。


「頼りなくない訳ない!ちゃんと頼りにしてる」

「なら困った事があったら頼れよ。すぐに駆けつける」


そう期待させる事を言って私を翻弄させる悪い男。


「俺はそろそろ会社に戻るから、華はゆっくりしておけ」

「はい。ゆっくりして帰ります」


伝票をスマートに取られてまた佳彦が支払って店を出て行った。

店内から佳彦の背中が見えて見惚れていたら女性が腕を絡めた。


「……っ」


その女性は高畑さんだった。

見た目二人仲良く喋りながら会社に向かって行く。


「佳彦の隣は私の位置だったのに…バカな自分」


小さく呟いた私の言葉は店内に流れていたBGMに消えて行った。

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