28・精一杯努めよう

第28話

「ハイア!本当なの?」

「何が?何を言われたの?怪我したの!?」


焦ってるティスにハイアは青ざめる。


「違う。怪我なんかしてない。リン様が縁談・・で、戻ってるって、」

「それを、何処で…あっ」


ハイアは言ってから慌てて口を塞ぐ。


「本当の事なのね…?リン様は、縁談で自国に

戻ってるって…」

「うん。自分は国を継ぐ器じゃないからって断ってるんだけどね。昔から弟が居るからサポートにまわるつもりなのよ」


ハイアから裏庭にある椅子に2人で座ってリンの

立ち位置の凄さに改めて実感した。


「…そうなんだ。でも、リン様は優秀だと思うんだけど…」

「そうなのよねー。次期宰相のヤリーを従者にしてる位だから優秀中の優秀よ!あはは」


笑い事じゃないからね!って思ったティスだったけど言わない事にした。


「まぁ、とにかく。縁談があるのは仕方ない。

でも、誰とも受けないわよ?だってリン王子は、もう決めた人が居るから」

「決めた人?」


ハイアが笑ってティスに向かって言うからティスは、真っ赤になり始める。


「えっ?えっ?違うわよ!絶対違うんだから」

「あらっ?リン王子は、“ティスを王妃にする”って言って戻って行ったわよ?」

「なっ!あり得ない!絶対に無理よ!」

「あらっ?無理な事はしてみないと分からないもんよ?」

「……」


ティスは、黙っていた。

何をどう言っていいか分からない。


「まぁ、とりあえずご飯食べましょ」

「うっ、うん。そうだね」


2人とも昼食の蓋を開けて頬張る。


「ティス、美味しいねー!」

「うん。さすが料理長の昼食」


侍女達はいつ呼ばれるか分からないから何処でも食べれる様に容器に入ってる。


「ハイア?ここ客間の件なんだけどー?」

「あらまっ、今行くわ。ティス、ゴメンね」


蓋を閉めて慌てて呼ばれた侍女の方へ走って行った。


「はぁー…忙しそうな、ハイア」


ハイアもヤリー様みたいにテキパキしてる。

仕事は丁寧で、綺麗。一部の侍女からは反感買っているが殆どの侍女は、ハイアに好意を寄せている。

昼食を食べ終えて空を見上げる。


「リン様に顔向け出来る侍女になろう!」


今のティスが出来る事と言ったら恥のかかないリン様の専属侍女として精一杯努めさせて頂こうと思ったティスだった。

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