6・最後の怒りの矛先はランティス

第6話

「えっ?」


振り向いたらマリーサが立っていた。

こんな所、ラリーネに見つかったら大変だ。


「マリーサ様!お姉様…ラリーネ様は屋敷の中です」


久しぶりにマリーサと話すランティスは何を喋って良いか分からなかったから慌てて笑顔を作る。


「先ほどの言葉はどう言う意味ですか?」

「ランティス!」


何が起こったのか一瞬分からなかった。

マリーサに抱きしめられた。


「〜〜っ」

「ランティス、本当にゴメン。俺は…」

「マリーサ?何処にいるの?」

「!!」


ラリーネの声が聞こえてきたから慌ててマリーサの腕の中から出る。


「マリーサ!探した…あらっ、ランティス」

「ラリーネ様、マリーサ様が家に見知らぬ馬車が止まっていたのを不思議に思って下さって見に来たのです」

「そう」


“私のよ”と見せつける様にマリーサの腕に絡みつくラリーネの腕。

貼りついた笑顔にランティスは恐怖を覚え、2人に頭を下げた。


「では、ラリーネ様、マリーサ様」

「あっ、そうだわ。マリーサ、両親が早く顔を見たがっていたから先に行ってくれる?すぐ追いつくわ」

「分かったよ。ラリーネ」


ラリーネが行ってしまったから姉妹2人になる。

ランティスの背中に変な汗がジワっと溢れて流れる。


「ランティス?マリーサと何をしていたの?」

「マリーサ様は本当にたまたま…」

「この泥棒猫!!その体でマリーサを抱きしめてどうだったのかしら?」

「きゃあ!!」


先ほどの行為を見られていてランティスの髪の毛をラリーネが引っ張る。


「痛いです!ラリーネ様!」

「そう?なら…」

「!!」


ラリーネは、もう片方の手からはさみを持っていてランティスの髪の毛を切り始める。


「やめて下さい!ラリーネ様!」


鋏が入り髪の毛が切られていく。


「ふふっ、惨めねぇー。ランティス?」


髪の毛をあっちこっち切られてボサボサな髪型になっていく。


「あはは。それで城の給仕行くのも悪くないわね。バカな妹を、持つと本当に大変だわ。マリーサもこんなバカな妹を選ばなくて正解ね」


鋏をその場に投げ捨てラリーネは笑ってその場を去った。


「ふっ…」


切り落とされた自分の髪の毛を見て泣く事しか出来ない。

先ほどのマリーサの言葉に惑わされずにそのまま馬車に乗り込めば…と後悔した。

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