4・会えたら会えると思う

第4話

ランティスは城の給仕が受かったので家から出て行く支度をしていた。


「ランティス!」

「あっ、はい!今行きます」


部屋に居たら下から義母に呼ばれて慌てて行く。


「はい、お義母様」

「あなた、受かったからって家の事を怠けてる

場合じゃないのよ?」

「あっ、もうし…」


パーンと頬を叩かれてヨロッとよろけた。


「怠けるんじゃないわよ!アンタはここの召使い!家族でもなんでもないわ!」

「…申し訳ございません」


ランティスは、頭を下げて謝る。


「ここに書いてあるのを早く買って来なさい!」

「はい。畏まりました」


紙を渡されて下を向いたまま家を出て曲がり角で立ち止まり顔を上げた瞬間涙が溢れた。


「知っていたじゃない。家族じゃないって…」


家族だと思いたかった。

でも、“家族じゃない”と直接言われて心はもう

ズタズタに切り裂かれていた。


「ランティス?」

「えっ?」


名前を呼ばれた方向を見たらあの時に会った男性が立っていた。


「リン?」

「ランティス!家はこの辺なのかい?」

「あっ、ええ」


家はこの辺なのだけども知られたくなかった。

リンまでラリーネに取られると思って嫌な気持ちになった。


「今日は何処に…ってこの頬は何?」

「頬?」


リンがビックリした顔をしてランティスの頬を

見ていたからランティスは思いして隠した。


「大丈夫よ。なんともないから」

「なんともないって。キミの顔になんて酷い事を!」


リンにバレていてそっと少し腫れているランティスの頬に触れる。


「リン、大丈夫だから」

「俺は、“大丈夫”を基本信じてない。だから君の大丈夫も信じない」


力強い目でランティスを射る。

ランティスは目が晒せなくなってしまったけど

慌てて話題を変える。


「早く、お義母様に頼まれた物を買いに行かないと」

「なら、俺も行くよ」

「リン、何処か用事ではなかったの?」

「用事はないよ」


リンはランティスと一緒に買い物を手伝ってくれた。

こんなに楽しい買い物はランティスにとって初めてだった。


「リン、買い物付き合ってくれてありがと」

「俺の方こそ楽しかったよ」


リンに家まで荷物を持ってきてもらった。


「また、会える?ランティス」

「会えたら会えると思う」


望みは持たない。

それが傷付かない為の言い訳。

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