3・自分の居場所

第3話

「昨日は遅かったわね!」

「申し訳ありません。お義母様」


昨日、一緒に探してくれた“リン”は、親切で優しくて楽しかったのが上回って、無事に物が揃っても揃わなくても怒られるのが日常だったのを忘れていた。

姉のラリーネと父親は優雅に紅茶を飲んでいて

ランティスの事は無視していた。


「ねぇ、あなた」

「なんだ?」

「この子使えない子だから城の給仕きゅうじなんてどう?」


城の給仕なんて聞こえは良いけど労働が1番低いと噂されている。


「いいんじゃないか?」

「そうよ。近々、私の婚約者のマリーサが来るんだから」

「!!」


ランティスはその名を聞いてビクッと反応してしまったけど姉のラリーネはそれを見逃さなかった。


「あぁ、ランティスはマリーサが好きだったかしら?」

「…違います」


マリーサの髪は茶で女性が振り向く容姿。

マリーサとは、両親と姉の目を盗んで愛を育んでいて“婚約”の約束をしていた。


〔キミと付き合えなくなった。ラリーネと婚約

するんだ〕

〔マリーサ様っ!!〕


ラリーネはランティスの幸せを許せなくて

マリーサを誘惑してランティスと破棄になった。


「マリーサは私の婚約者なのよ?いい加減諦めてね」

「…ランティス、受かり次第城に上がりなさい」

「はい。お義母様」


ランティスは頭を下げてその場を去ろうとしたら

3人の楽しい会話が聞こえてくる。


「ラリーネ、可愛い私の娘。楽しみね」

「ラリーネ、美味しい茶菓子もあるよ」

「お父様もお義母様もありがとうございます。

本当にクズな妹を持って私が恥をかきますわ」

「……っ」


居た堪れなくなり慌てて自分の部屋に行きベットにうつ伏せになると涙が溢れて来た。


「お母様、どうして亡くなってしまったの?」


ランティスとラリーネの本当の母親は流行病で亡くなってしまったのだ。


〔ランティス、泣かないで。幸せになって〕

〔お母様!〕


そう言い残して亡くなり父親は昔交際していた

恋人と再婚した。

姉のラリーネは社交的だからすぐ打ち解けたが

ランティスはそうではなかったから標的にされた。


「お母様…。寂しいです」


涙は拭いても拭いても溢れてくる。

この家にいても自分の居場所がないのは分かる。


そして“城の給仕”の試験を受けて合格した

ランティスだった。

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