29・久しぶりの対面

第30話

「•*¨*•.¸¸♬︎」


今日は鼻歌混じりで部屋の掃除をしている。

恭一は、シッターさんに任せて夕方迎えに行くと言ってあるからそれまで片付け。


「あれっ?はーい」


チャイムが鳴ってインターホンを見ると知らない男性が映っていた。


井口雅之いぐちまさゆきの父親だ」

「今、出ます!!」


雅之の父親が来て慌てて玄関に向かって開けて

リビングに通す。


「粗茶です」

「……」


沈黙が怖いけど向かい側に座る。


「君とは、大学時代以来かな?」

「はい。お久しぶりでございます。

改めて自己紹介させて頂きます。草野真弥くさのまやと申します」


改めて自己紹介をして雅之のお父様はお茶を飲んでいた。


「今日は手短に済ますよ」

「はい」


胸ポッケから何かを取り出してテーブルの上に置く。


「自分の嫁は自分で決めると言って聞かない。

君から雅之の元から離れてくれないか?」


視界に映るのは“雅之と金輪際近づかないと記されている”誓約書”と小切手。


「君の好きな金額で構わない。子供抱えて大変だろう」

「…小切手は辞退させて頂きます。私は、好きで雅之さんの側に居ます。誓約書も記入しません」


離れないと決めた。

信じるとも決めた。


「お子さんは…恭一君だったかな?」

「えっ?」


サァーと血の気が引く。


「恭一に何か……」

「何もしてないよ。したら犯罪だからね。でも、よく考えて」

「!!」


雅之のお父様はそう言って小切手と誓約書を置いて部屋から出て行った。


「私には恭一が1番大事。でも、雅之も大事…」


どっちを取るって言ったら大学時代なら雅之。

でも今は大事な息子が私の側にいる。


「恭一を迎えに行かなくちゃ…」


迎えに行こうと立ち上がったらガクンっと足に力が入らずソファーから落ちた。


「どうして…」


足を見たら震えていた。


「あっ…今更震えが止まらない……」


手も震えて来て足も震えていてこんな時に1人で

いる事に打ちのめされる。


「泣くな、私!!」


涙が出てきて止まらない。

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