28・親子の一コマ

第29話

「はい、課長。これです」

「あぁ、ありがとう」


出来た書類を大量に課長に提出して、自分の

ディスクが綺麗になる。


「草野、今日は張り切ってるわねー。どした?」

「えっ?どうもしないよ。ササッと終わらせて

夕飯作んなきゃってね」

「ある意味新婚さんだもんねー」


同僚には結婚したと言ってあるけど籍は入れず

偽装・契約結婚してる私と雅之。


「あっ…あはは。そうですねー…」

「草野、今度聞かせなさいよ」

「あっ、はーい。お先でーす」


逃げるように恭一の所へ向かい無事に会ってお家に帰って来た。


「ただいま…」

「たらいま」


恭一も、もうじき3歳。

車と電車が大好きな男の子に育っていて嬉しい。


「パパいない?」

「そうね。いないね…」


帰って来ても雅之の顔が見れなくてもうかれこれ

1週間。

前はもっと会えない時は頻繁にあったはずなのに寂しくって…。

でも、私は!悲観ひかんにくれてる暇はない!!

私は私の事をしなくては!!


「ママ、ご飯作るからねー」

「はーい。ごはん」


恭一が大人しく遊んでいる間に夕飯を作る。

雅之がいつでも帰って来てご飯を食べれる様に

雅之の分も用意しておく。


「………」


帰って来なくって食材が痛んで何回捨てたか

分からない。

捨てる時の心が痛む事はいつまでも慣れない。

大学時代の同棲も思い出す。


「あの時もこうやって捨ててたなぁー…」


あの頃は信じられず帰って来ても喧嘩ばかりして雅之の大変さも見ずに自分の事しか考えられず

八つ当たりしていた。


「あの頃の自分はお子ちゃまよ」


アハって笑って夕飯を作って行く。

食べても食べなくても雅之の体が大事でありますようにと願って。


「ポンポン、すいたー」

「まだだよー」


恭一が私を容赦なく思い出から引きずり出して

くれるから苦笑いになる。

寂しくないって言ったら嘘だけども恭一が、

居てくれて本当によかったと思う。


「恭一、ありがとう」

「?」


きっと分かってないと思うけど感謝してもしきれないよ。

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