第7話
始業式が終わり、後はホームルームだけとなったが、教室内にいる生徒……特に大半の女子生徒はそわそわしていた。
中には鏡を凝視しながらメイク直しをする者もいた。
ガラリ、と閉じられたスライド式のドアが開かれる。
我らB組の担任のお出ましだ。
笹山はただ歩いて教壇に立っただけなのに、その場にいた生徒は縫い付けられたように笹山に視線を向けていた。
「皆さん、席に着いてくださいね」
目を細めて微笑みかけた笹山に、女子生徒は心臓を撃ち抜かれたのか頬を染めたまま、ふらふらとおぼつかない足取りで自分の席に戻った。
全員が席に着くのを確認すると、笹山はチョークで自分の名を書いた。
繊細なお手本になりそうな綺麗な字だ。
「改めて自己紹介します。今日から君達の担任になる笹山です。教師三年目でクラスを受け持つのは初めてですが、精一杯頑張りますのでよろしくお願いします」
笹山が小さく頭を下げると、生徒全員は歓迎するかのように拍手を贈った。
「先生っていくつですか!?」
「早生まれの二十五です」
笹山が答えると、教室内は色めき立っていく。
「好きな食べ物は?」
「どこに住んでいますか?」
「好きな女の子のタイプは?」
「彼女いますか?」
(お腹空いた……早く帰りたい)
女子生徒による笹山への質問が殺到し、中々終わりそうにない。真綾は突如襲ってきた空腹に耐えながら洩れそうな溜息を噛み殺した。
延々と続く質問に、笹山は嫌な顔を一つ見せず笑顔でたしなめた。
「興味を持って頂けるのは嬉しいですが、僕への質問はまた今度聞きます。まだ来たばかりで全員初対面ですので、出席番号順に僕に自己紹介をしてくれませんか? 名前と何か一言お願いします」
笹山の一言で質問タイムは終了し、自己紹介が始まった。
窓際の最前列から始まり、各々が手短に自己紹介をしていく。
お調子者や、おっとりした者、早口でせっかちな者……皆個性がバラバラだった。
そして、真綾の番になり。
「久城真綾です。部活は文芸部に所属しています。趣味は読書と、テレビ中継がほとんどですがスポーツ観戦が好きです」
正直人前に立つのは苦手だが、極力無難になるように努めて当たり障りのない自己紹介をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます