第6話
笹山は人間離れした端整な容貌をしていた。
白磁の陶器のような肌、濡れ羽色の緩い癖のある長めのショート、綺麗なアーモンド形の大きな瞳、薄い血色のいい唇。
(同じ美形でも、男らしい修也くんと違って中性的な顔立ち……)
容姿端麗な異性を見かける度に、修也と比較してしまうのは真綾の悪い癖だ。
無意識に比較しては、修也が一番格好いいと結論付けるのは最早お決まりのパターンだ。
「静粛に」
ようやく教師の注意が入り、講堂は再び静けさを取り戻した。
笹山は辺りを見渡すと、動揺することなく落ち着いた様子で挨拶を始めた。
「初めまして。××高校から参りました
挨拶は簡潔なものだったが、テノールの美声は思わず聞き入ってしまう。
見渡すと周囲にいた女子生徒は魂を抜き取られたかのように呆然となり、頬を染めていた。
(うちのクラス、騒がしくなるだろうな)
真綾は他人事のようにそんな顔を思いながら、壇上から降りていく笹山を見ていた。
その時、笹山の視線が重なった……ような気がした。
真綾は慌てて目をそらして、自分の膝小僧を凝視する。
目が合ったなんて、自意識過剰かもしれない。
しかし、見つめていたことを本人に気付かれた可能性を思うと、真綾は恥ずかしさと罪悪感でいっぱいになってしまった。
(一年間お世話になるのに、気持ち悪いって思われたらやっていけないよ)
「気付いていませんように……」
真綾は祈るような気持ちで小さく独り言を呟いた。
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