第21話
「芥子粒のように小さな人工知能とボイスレコーダーが無数に体内を流れているんだよ。でも、人の手がここまで加わった生物を見ると、少し怖いよね。わかるよ」
「わたしは怖くありません」
ヒト薔薇が口を挟んだ。相変わらず満面の笑みだ。
「わたしは自然そのものの美しい黄薔薇です」
確かに、美しかった。わたしは何だか、黄薔薇が憎らしくなった。
隣の庭は、薔薇の蕾で彩られている。これほどに美しいのに、わたしはどうして醜い感情を抱いているのだろう。そう思った。
*
わたしは黄薔薇の池から離れ、静雄は黄薔薇の元に残った。ふと振り返ると、静雄が作業着のポケットから小さな箱を取り出していた。中から出した細くて短いものを口に含み、その反対側に点火装置で火をつけた。目に見えるため息のように、静雄の口の中から煙が吐き出された。黄薔薇はその煙を、珍しげに見ている。
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