第20話

「沙良さんですか?」


 整いすぎて、機械的な感じのする声だった。少女は日本語を話している。では先程のスラブ民族向けチャンネルの少女ではない。近くに行くと、その髪も金髪ではないことがわかった。黄色だ。それも髪の毛ではない。腰まで伸びた長い花弁だ。胸も平らで、体毛がどこにも見当たらない。裸だけれど、いやらしい感じが全くなかった。


「ヒト薔薇、育ったの?」


 わたしは、ヒト薔薇に返事をせずに静雄を振り返って尋ねた。静雄はうなずいた。


「沙良がほったらかしているうちに、大分育ったよ。きれいだね」


 きれいだね、と言われると、何となく不愉快な気がした。それでも、そうね、と返した。


「ありがとうございます」


 ヒト薔薇が丁寧に頭を下げた。わたしは薄気味悪くなって少し後ずさった。


「話すのね」


「そうだよ」


 静雄は何も知らないわたしを呆れたように見た。

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