第19話

「ちゃんと育てるって、約束しただろう」


「約束はしてないわ。言っただけ」


「とにかく、来てごらん」


 静雄がドアを開けてわたしを部屋から出した。そのとき、静雄の体からはあの妙な匂いがして、わたしは一瞬不安を覚える。


 一階に下り、ホールを抜ける。玄関から出てアーチの下を歩いていたとき、わたしには何かが見えた。森の近くのあの森に、誰かがいる。わたしは静雄と共にゆっくり近づいていった。新しい住人だろうか? その髪が金髪であることにわたしは動揺した。これは日本民族向けチャンネルではないのか。ならば日本民族の登場人物しかいないはずなのでは?


 その少女は、足を池に浸けていた。肌が抜けるように白い、裸の少女。わたしはそのことに気づくと反射的に静雄を見た。静雄は少女に微笑みかけていた。わたしの混乱が酷くなる。少女がぱっと振り向いた。大きく笑っている。

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