第18話

ほらね。愛されるのはこういう少女なのだ。


 不意にそう思って、わたしは愕然とした。そうだ。愛されるのはこういう美しい少女なのだ。わたしは愛されない。誰からも。唇をぎゅっと閉じ、泣く前兆が訪れる。


「沙良」


 ノックの音と共に、声が聞こえた。静雄だ。わたしは表情筋をほぐして不吉な気配を追い払い、椅子をドアのほうに向けて静雄を迎え入れた。


「珍しいわね。静雄さんが自分からわたしの家に来るなんて」


 わたしは微笑みながら、そうできることに安心していた。静雄は困惑したようにわたしを見つめ、


「全然世話をしてなかったね」


 と言った。わたしは首をかしげる。


「ヒト薔薇だよ」


 ああ、とわたしは声を出す。あんなもの、記憶にも残らない。

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