第30話

その日も、夕食の支度が整うと瀬奈は人払いをし、御膳所隣の小部屋へ入った。


すぐに出て、御膳を運ぶよう指示をすると自室に戻る瀬奈。


真咲は配膳の指示をりおに任せ、御膳の保管のためのその小部屋へ入った。


茶棚があるだけの小さな部屋、特に変わった様子はないようだ。

真咲は茶棚を開き、ひと通り中を確認する。

特に使われていない棚のようで、物は少ない。


ふと棚の隅にある懐紙入れに目が留まり、開いてみて驚いた。


中に入っていたのは懐紙ではなく、無数の赤い薬包。


赤い包み紙を開くと、白い粉薬。

嗅ぎ覚えのない薬の臭いに、手が震える。


真咲は薬包を一つ帯の間に隠し、部屋を出た。


逸る動悸が抑えられず自室へ戻り、座り込む。


・・・考えてみれば、御膳所の茶棚、胃薬の一つもあっておかしくない。


しかし嫌な予感が拭いきれない。


誰にも知られる事なく、薬の正体を調べる手筈があれば・・・



御台様の事を案じられている瀬奈様と、御膳のある小部屋で人払いをする瀬奈様。


瀬奈様は上様の御内証の方で、今でもお二人には特別な絆があると聞く。

先代の御台様方への態度とは確実に違う、瀬奈様の言動。


お心は確実なほど見えているのに、やはり分からない。


真咲は手の中の薬包を見つめながら、知る限りの瀬奈の姿に思いを馳せた。


情が深いが、流されはしない強さと冷酷さを持つ瀬奈。

いつでも上様のために動き、堂々と前を見据えて立つ人。


その姿が揺らいでいくようで不安になりながら、真咲は文を書くため硯箱を開いた。



つづく



今後の予告


「もうあなたは、上様のものです」

言いたくなかったが、溢れた。

初めから分かっていた事だ。

それでも、他人に触れられるひろむを見たくないし、触れたくない。



「瀬奈様を敵に回すおつもりですか?」

泣きながら部屋を飛び出そうとする真咲様の腕を掴み、きつく抱く。

心のままに突っ走るあなたは可愛いけれど、今は別だ。



大変お待たせいたしました。

話を進めるための説明?が多く、瀬奈様出なくてスミマセン~


いつの間にまりもが忍びに?なんてツッコミはナシでお願いします、カクダンのイメージ。


御台様倒れるまでいけませんでした。

多分次はお待たせせずにUP出来そうです。

愛の嵐、またの名を瀬奈スペ的な感じになる予定です、予定ですよ。



第五話 おわり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る