第29話
城へ赴く事が増えた瀬奈から、お役目代行の任を受けた真咲。
奥全体というよりは、主に御台様のお世話。
体調が優れない時にお出しするお茶や、お好きなお菓子の事。
話をしたそうな時は隣に寄り添い、そうでない時はつかづ離れずに距離をとり、常に気に掛けていて欲しいと。
そう真咲に命じた瀬奈の表情があまりに優しくて、真咲は尋ねずにはいられなかった。
「何故、御自分でなさらないのですか?」
真咲の言葉に、薄く笑った瀬奈は
「お前の傍の方が気が休まるだろうし、私は忙しいからな」
そう言って部屋を後にした瀬奈を見送り、小さく溜息をつく真咲。
御台様が大奥に入られてから、全てが変わった。
いや、変わったのは御台様を取り巻く人の心か。
心を閉ざしていた上様のご執心と、どうにも複雑な瀬奈様のご様子。
最初は戸惑っていた女中達も、今では素直で朗らかな御台様に心を寄せている。
りお、そして私も。
女の牢獄と言われる大奥。
美しい衣装と仮面で彩られた、女の業の渦巻く場所。
心など要らないし、見せてはならない、行く先などないのだから。
そのはずだったのに、今は皆の心が見えすぎて怖いくらいだ・・・
御台様の御膳の管理は、大奥での重要なお役目。
支度が整うと毒見が行なわれた後、瀬奈の確認の元、御台様のお部屋へ運ばれる。
それまでは、真咲やりおで確認を行なう事が多かったが、ここのところ瀬奈が頻繁に姿を現す。
多忙な瀬奈が御膳所へ、時には人払いまでして、何をしているのかが気になる真咲であった。
思い返せば、瀬奈が御膳所に現れるようになってからではないか、御台様が体調を崩される事が増えたのは。
直接関係があるとは思いたくなかったが、どうにも気にかかる。
御台様の不調は時々、軽いものだが胃や胸に不快感が起こるとの事。
御懐妊ではと疑われたがその様子はないようで、様子を見ている状態だ。
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