第216話夏が終わり11年目の秋~イザベラの出産~
「そろそろ夏も終わりかぁ」
私はぼやく。
「マリア様達帰っちゃうのか、ルキウス君大人しく帰ってくれるかなぁ?」
と、一抹の不安を抱く私。
そしてそれは予想通り──
「ルキウス、もう帰るのよ⁈」
「いやですー‼」
「ルキウス! お前は帰らねばならないのだよ⁈」
「いやー‼」
ルキウス君、案の定帰るのめっちゃ拒否ってる。
村人達は微笑ましそうに見てるが、大変なんですぞ?
と思って居たらティリオさんに抱っこされていた音彩が下りて、ルキウス君に近づいて。
バチン!
とビンタ。
「じぶんのかーさまととーさまたちをこまらせるひときらい!」
その一言に大人しくなり、すごすごと馬車に乗り込むルキウス君。
馬車と琥珀が走り去って行くのを見送ってから、音彩と対話。
「音彩、ルキウス君は何も言わなかったし、親であるマルス様とエリザ様も何も言わなかったけど、一応親御さんは王太子とその妻で、ルキウス君は今は王子様でも将来的に王様になるかもしれないのよ?」
「おうさまになるならよけいわがままいっちゃだめ!」
「確かにそうだけど、いやそういうことじゃなくて……」
私は頭を抱える。
するとティリオさんがわって入って来た。
「そういう立場の方を叩くのはダメと言っているんです。口で丸め込めなさい」
「うん!」
それでいいのかなぁ、とか思いながら私は音彩を抱っこするティリオさんを見つめた。
次の日の夕方、事件というか、大変な事が起こった。
「こ、コズエ様!」
「ど、どうしたのロラン様⁈」
「イザベラが破水しました!」
「ヴァー⁈」
私は奇声を上げながらルズお婆ちゃんのところに行き、助産師の子達にも声をかけた。
そして始まった出産は3時間で終了した。
早いか遅いか分からない、多分早い。
村の出産速度が早いからだと思う。
ディーテ様の加護か?
そして産まれたのは双子だった。
クロウからロラン君とイザベラちゃんは聞いていたようだ、だったら私にも教えろよクロウ。
「名前は決まってるの?」
「はい、女の子をマリーローザ。男の子をカナンと」
「いい名前だね」
「ありがとうございます、コズエ様」
イザベラちゃんはニコッと微笑んだ。
ただ、ここからが大変だった。
イザベラちゃんの産後の肥立ちが何故か悪く。
なんとか私の畑の作物を加工したものを食べて貰ったり、治癒魔法をかけたり、クロウに言われてマナの実とリラリスの実を加工した物を飲んで貰ったりして漸く体調が戻った。
どうやら、イザベラちゃんの加護のブレスレットを外していたのが原因らしい。
その所為で、呪いが直にイザベラちゃんに言ったそうだ。
結果産後の肥立ちが悪くなったそうだ。
むくんでブレスレットを外しちゃったらしいから緩めにつけられるようにアレンジして渡した。
これは私が悪い。
うん。
ちなみに呪いの元はクロウが何とかしたみたい、どうしたかは聞かない。
聞きたくない。
ブレスレットをつけた翌日からイザベラちゃんはすっかり元気になり、子どもの世話を率先してするようになった。
ロラン君も、村の先輩パパ達の指導でオムツ替えとミルクを飲ませるのとかはできるようになっていた、村の先輩パパ達に感謝感謝。
慌ただしくしていると、夏は終わり──
『秋ですよー』
『秋ですー』
秋がやって来た。
実りの秋。
食欲の秋。
色々あるが、実りの秋が本番だ。
畑仕事に子育てに、色々頑張らないと!
「コズエ、無理は絶対しないでくださいね」
「ああ、そうだコズエ無理はするな」
「コズエ様、無理したら棺桶にぶち込みますよ」
旦那達に釘を刺されたので無理しない範囲で頑張る。
やっぱり秋は作物が豊作だ。
お米や小麦も普段よりも格段と豊作になる。
秋が旬の作物は特に、豊作だ。
大体四、五日で収穫できてしまう私の畑だが、それでも豊作の具合が違う。
冬は畑を休ませるが、それ以外は普通に畑作をやっている。
種を蒔き、水をやり、色々とやっている。
「やっぱりこういう収穫は楽しいなぁ」
とか考えていると──
「「「かーさまー!」」」
晃、肇、音彩がとっとこと、籠を背負って現れた。
「どうしたの、三人とも?」
「えへへ」
「おてつだいさせて!」
「かーさまのおてつだい!」
「え⁈」
私は驚きの声を上げる。
だって、まだ五歳児よ!
遊びたい盛りじゃないの⁈
「ほ、他の子と遊ばなくていいの?」
「きゅうけつきとだんぴーるのこたちとはこれがおわったらあそぶ!」
「ほかのみんなはかーさまのてつだい!」
「だからねいろたちもかーさまのてつだいする!」
ヤバい、ちょっと涙でそうだわ。
でもこらえる、泣いたら絶対勘違いする。
「……分かった、無理のない範囲でね」
「「「はーい!」」」
子ども達はきゃっきゃと畑の方へと走っていた。
そしてひょいひょいと木に登り果物を籠に放り込んで行く。
めっちゃ器用に。
そして籠がいっぱいになると木から下りてきて、どこかに──保管庫へ向かっていった。
保管庫にいる大人に果実を渡して、空にしてはまた収穫するを繰り返していた。
私はちょっと席を外して保管庫に向かって三人が収穫した果実を見たが、果実は瑞々しいままだった。
「力加減ができてるってこと」
「その通りだ」
「クロウ!」
クロウが姿を現した。
「……もしかして、子ども達誘導したのって……」
「我だ、暇を持て余していたのでな」
「だったら、遊ばせるとかあるでしょう?」
「最近は力加減を覚えさせて居るぞ、ほれルキウスのへのビンタが強烈ではなかったのは我のお陰だ」
「はいはいありがとうございます!」
若干自棄になって言う。
「子等の力加減は任せておけ、此度の収穫はその成果を見せてこいと我が入ったのだ」
「もっと他の方法は無かったのかと問いたい」
「無いな」
この野郎め。
私は盛大にため息をつく。
仕方ない、子ども達は綺麗に収穫できた事を褒めると同時に収穫したものを食べさせてあげよう。
そう思って畑に戻っていった。
畑で籠の果物を見つめていた三人に収穫したのを食べて良いと言うと、三人は目をキラキラさせて、果物を食べ美味しそうな表情と「おいし!」と言う言葉を発した。
食育、みたいなものかなぁと思いながら子ども達が益々愛おしくて──
反抗期がめっちゃ怖くなった──
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