第103話クロウの魔力枯渇





 私は急いで自宅に戻り神様に電話した。

「もしもし神様⁈」

『要件は分かっている、クロウが目覚めない事じゃな』

「そうなんです……どうして⁈」

『ただの世界樹をユグドラシルレベルまで活性化させたのはお前さんじゃが、お前さんの魔力に引きずられる形で魔力をエンシェントドラゴンは持って行かれたんじゃよ』

「私の、所為?」

 どうしよう、どうしよう。

『落ち着くんじゃ。魔力枯渇になって眠っているだけじゃから、魔力を満たせばいいだけじゃ、そう言う薬がある』

「どど、どうやって作るんです⁈」

『ユグドラシルの葉っぱ、花、マナの実、リラリスの実、この三つがあれば良いんじゃが、量が必要じゃな。ユグドラシルはともかく、マナの実とリラリスの実は手に入れるのが大変じゃぞ?』

「それでも!」

『まぁ、ハイエルフがマナの実を、魔族がリラリスの実を持って居るから、分けて貰いお前さんの加護で急成長させ、実も肥大化させれば良かろう』

「分かりました、行ってきます!」

『気をつけるんじゃぞ』

 私は自宅を飛び出した。


「レイヴンさーん!」

 里にいるレイヴンさんに駆け寄る。

「おや、どうしたのですかコズエさん」

 私は理由をぼかし、クロウが魔力枯渇で眠っているから目覚めて貰う為の薬としてマナの実が欲しいと言った。

「うーん、沢山あるならお譲りしたいんですが、お譲りできるのが一個だけなんです……」

 レイヴンさんはそう言って、赤い実を持ってきた。

「構いません、種にして、木になって貰いますから!」

「……コズエ様ならできるでしょう、お譲りいたします」

 やった、マナの実ゲット!


 私は家の果樹園ゾーンに戻り、実を植える。

「みんな、この実を木にして沢山実らせて、大きく実らせて!」

 肥料と、水を与えながら妖精と精霊達にお願いする。


『分かった! 愛し子様のためならえんやこら!』

『頑張ってね、愛し子様』


 次はリラリスの実だ。

「アルトリウスさん、アインさん、ティリオさん、着いて来てくれる?」

「勿論です」

「構わん」

「良いですよ」

 と三人を連れて転移門へ。

 私の姿が出て来たのを見た兵士さんがお城まで案内してくれた。


「コズエ様、此度は何のご用ですか」

「実は──」

 私はクロウが魔力枯渇寸前の為休眠状態していることを伝えた。

 目を覚まさせる薬の為にリラリスの実は必須だと。

「リラリスの実なら幾分か城に蓄えがありますね、どうぞ持って行ってください」


 私は案内されるまま、城の食料庫に行き、紫の大きな実を貰う。

「一つで良いんですか?」

「はい、あっちで、根付かせます。多分これだと足りないと思うので……」

 といって一つだけ貰い、転移門で村に戻った。

 村に戻ると、果樹園の一部を新しく耕し、リラリスの実を植え、先ほどのように妖精と精霊にお願いする。

 そして堆肥と水をやり、ユグドラシルの木へと向かう。


「世界樹ユグドラシル、お願いがあるの!」

『分かっています、どうぞ、上って葉っぱと花をお取り下さい』

「うん!」

 足場が出て来たのでその足場を飛び乗って、上へ向かう。


 ズボっと、木の上に来たら袋に新鮮な葉っぱと花を詰め込み、飛び降りた。


 そして果樹園に戻ると苗木になっていた。


 私は堆肥を再度与え、水をやり、魔力を込める。

 すると、二つの木は光った。


 真っ赤な巨大な実と紫の巨大な実をたわわに実らせていた。

「す、凄い」

「さすがコズエだな」

「ええ、さすがコズエです」

「コズエ様、さすがです」

 三人に褒められるが喜んでいる場合ではない。

「よっし、これの収穫だ!」

 一個残らず収穫する。

 家の前に実と、葉っぱと、花たちを置き、私はクラフトを行う準備をする。

「まずは実の液体かと液体の圧縮か、そうだよねこんなに食べられない」

 クラフト小屋に行き、実をジュース状にして、それを濃縮させる。

 普通ならあり得ない程濃縮できた、50cc位。

 両方とも。


 それと、ユグドラシルの葉っぱと花も液体化させ、混ぜ合わせる。


 なんかちょっと毒々しい色の薬できたよ。

 ねぇ、これ大丈夫だよねぇ?


 不安になりながらも、私はその薬の入ったコップをクロウのところに持って行き、クロウに飲ませた。

 眠っているはずなのにごくごく飲んでる、すげぇ。


 しばらくするとカッと目を見開いた。


「我は……?」

「よがっだおぎで~~‼」

 起きた苦労を見て私は安堵から泣き出してしまった。

「梢どうしたのだ?」

「魔力枯渇寸前で休眠してると言ったから怖くなったの~~!」

「気付かれたか……」

「それでお薬作って飲ませたの~~!」

「あの薬をか? 我の魔力枯渇を回復するなら相当……あぁ、そうか。梢、礼を言う」

「ん?」

「マナの実と、リラリスの実、両方を仕入れて木にして実を大量にならせたのだろう、しかも肥大化している」

「ぐすっ……そうだよ」

「そうで無くては我の枯渇は癒やせぬ、済まないな心配させて」

「こっちこそごめん~~!」

「謝る必要は無い、お前はお前の望むことをしただけだろう」

「でも……」

「だが、確かに無理をしすぎたな、これではお前を守ってやれないしな」

「いいよー……そんなこと」

「そんなことな訳あるか!」

 今度は何故か怒られた。

「ごほん、まぁ今回の件は助かった礼を言う」

「うん……ところでマナの実とリラリスの実ってどういう効果あるの?」

「神はその説明省いたのか……」

 クロウはあきれ顔になった。

「マナの実は名前通り魔力──マナを蓄えて果実を実らせた物だ、体に魔力を与える」

「ほむほむ」

「リラリスは体力を回復させる実だ、マナの実を与えると効果が倍になる」

「ほむ?」

「つまり、ユグドラシルの葉っぱと花、マナの実の効果を最大限にし、その相乗効果で体の調子を戻した──と言うものだ。魔力枯渇は体調不良を引き起こすからな」

「そうなんだ……」


 クロウはベッドから起き上がり、伸びた。


「休んでたら飯が食いたくなった。ハンバーガー寄越せ」

「はいはい、ポテトとレモネード付きでしょ?」

「勿論」


 私は呆れ笑いを浮かべて家に戻り、ハンバーガーを作り、ポテトを揚げて、レモネードを作って、お盆にのせてクロウの家に戻った。

 巨大なハンバーガーだったが、クロウは口をがばっと開けて食らいついた。


「うむ、美味い」


 そう言いながらあっという間にハンバーガーを完食し、次は大量のポテトを口に飲むように入れる。


 頬を膨らませて咀嚼するのがなんか可愛い。


 最期にレモネードを飲んでぷはっと息を吐き出す。


「うむ、腹が減った時はやはりこれだな!」

「そっかー」

 と、私は空笑いを浮かべる。


 ちょっとだけ心配して損した気分になったのだ。


「梢、世話を掛けたな」

「いつも面倒みてくれてるじゃん」

「そうだな」

「これからも宜しくね」

「勿論だ」


 私達は顔を見合わせて笑い合った。





「コズエ、私達が倒れたら同じ事をしますか」

「するに決まってるじゃん、なんで?」

 アインさんに言われて首をかしげる。

「コズエは誰にでもそうする、大丈夫だろう」

「そうですね、コズエ様ですから」

「んむー?」

 若干納得いかない会話だが、私は尋ねないことにした。






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