第11話

HRが終わり、宍戸が教室から出て行く。その後、稲垣さんが『何があったんだ?』と聞いて来たので、何とか誤魔化しておいた。……こんなこと、言えないよ。



しかし、流石に芹菜ちゃんは誤魔化せなくて、ずいっと体を私に近づけてきて目を細める。この時の芹菜ちゃんは私が本当のことを言うまで絶対に離してくれない。




「な、何でもないって…」



「あんな顔してた奴がそんなこと言っても、根拠ないっつーの。薄情しなさいよ」



薄情しろったって、これはちょっと言えないというか、言いたくないというか。目があっちにいったり、こっちにいったりと泳がせていると廊下から『おい、轟さんが通るぞ!』と聞こえてきて、体が反応する。



何故この教室を通るんだ。彼の教室は確かもう1つ下の階のはずだ。彼に目を合わせないようにして、机をガン見していると芹菜ちゃんが『あ、轟先輩達だ』と呟いた。




「おはようございます!轟さん!」


「はようございあす!!轟先輩!」



挨拶をされているのは聞こえるが、挨拶を返す言葉は聞こえない。挨拶くらい返してあげたらいいのに……と勝手ながらに思った。すると芹菜ちゃんが『あ』と声を上げたので視線を向ける。




「珍しいね、みんな揃ってるなんて」



「みんな?」



「そう。麓高校の元トップ様兼現No.2様とNo.3様のこと」



乱さんのことは流石に知っていたけど、その2人のことは知らない。廊下に視線をこっそりと向けると確かに乱さんの後ろに黒髪の男の人と金髪の男の人がいた。

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