お兄ちゃんとは呼べません。

第4話

父は単身赴任でほとんど家にはいなくて、私は1人で家事を行なってきた。それが嫌だと思ったことはないし、普通のことだと思っていた私は負担にも感じたことはない。



母は私が小学3年生の時に亡くなり、父は一度は単身赴任から帰っては来れたのだが、私が中学生に上った頃にはまた単身赴任に出かけた。海外に行く時もあり、私を連れて行く決意をしたこともあったのだが、父の反対を押し切って日本に留まった。



慣れ親しんだ街を離れるのが嫌だったから。理由はそれだけではなかったけど。それでもずっと年上の従兄が私の様子を見に来てくれたりして、非行に走ったことは一度だってない。



父が単身赴任で家にいない、1人で過ごすことが多かったこと以外は普通の家庭だったはずだ。平凡に過ごし、平凡に学生生活を送ってきたのだ。このまま普通の時を過ごすつもりだったのだが。






『風鈴(カゼスズ)、父さんな、再婚することにしたんだ』



素直に嬉しかった。父が私のことで重荷に思っていることがあるんじゃないかって思っていたから。父が幸せになってくれるならそれでよかった。だから純粋に嬉しかった。



新しい母親を受け入れられるかっていう疑問もあったはあったけど、そんなに人見知りでもないし、父に聞いても『気さくでいい人』らしい。だから仲良くできる自信はあった。

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