Chapter 21
そして、翌週以降も週末の度にどこかで食事をして、彼女のマンションに泊まるという日々が当たり前になって行くけれど、翌週くらいまでは特にそれ以上の進展は無く、でも彼女の方はどんどん積極的になって来て、腕にしがみ付くだけでは無く、事あるごとに体を密着させて来たり、不意に抱き付いて来たり、顔を思いっ切り近付けて来たりと、どんどんとエスカレートして来た。
そして彼女の部屋に入ると同時に抱き付き攻撃がいきなり始まる。
「正攻法なんて適当に言っただけだと思ってたのに、そういう事だったんですか~(汗)」
彼女の頭の回転の良さには、いつも驚かされる。
会話のユーモアやセンスも素晴らしく、いつも期待以上の返事をしてくれる。
それがきっと、最初に感じた心地良さだったんだなと、そんな風に思っていた・・・けれど、
今はとりあえずこの彼女に攻められ続けてる状況をなんとかしないと・・・(汗)
「フフフっ、早く負けを認めなさい(笑)」
と言いながら、思いっ切り絡み付いて来る彼女。
もはや、彼女にされるがままの状態だったけど、でもそんな彼女はまるでじゃれ付いて来る子猫のようで、可愛くて仕方なかった。
スタジオでは相変わらずクールで、顔を見合わせる事すらもほとんど無かったけれど、そのギャップがむしろ欲情を掻き立てるというか、どんどん彼女の虜になってしまうような、そんな感じだった。
ただ、やっぱりその時点では、その先へ一歩でも踏み出すと、一気に針が進み、別れの0時にどんどん近付いてしまう気がして、ギリギリの所で踏み止まっていた。
でも、秒針の音と同じような心臓の鼓動が、どんどん大きくなって行くのを感じずにはいられなかった。
「ああ、もう負けそう・・・(汗)」
と、言いつつも、彼女を逆に抱き返して反撃したり、また抱きつかれてスリスリ攻撃をされたりとか、多分そんなのを外でやって、誰かに見られたら、とてつもなく恥ずかしい状況だったと思う(汗)
「なかなかしぶといわね(笑)」
「KTさんこそ(苦笑)・・・あー、ちょっ、ちょっと落ち着きましょうよ」
「フフフっ、なんか楽しい♪(笑)」
「これってもう、普通の恋人同士と変わらない気がするんですけど(汗)」
「えー違うよ。だって私まだ口説かれてないし(笑)」
「もうお互いの気持ちが解ってるんだから、それでいいじゃないですか~(苦笑)」
「じゃあキスくらいしてよ~」
「その手には乗りませんからね(笑)・・・・あっ!(汗)」
まさかの、いきなり彼女からキスをされて焦る自分。
そのまま首に腕を回されて身動き出来ず、やっぱりされるがままの状態(汗)
「ああ・・・無茶苦茶嬉しいけど、なんか・・・すごく複雑な気分・・・」
「フフっ、ゴメンね(笑) 私の方がもう耐え切れなくなっちゃった(笑) 」
「だってS君可愛すぎるんだもん♪」
「なんだか・・・勝負に勝ったのに、何故か凄い敗北感・・・(泣)」
「もう、大好きっ!」
と言って、また彼女からキスの嵐(汗)
「あの、ちょっと・・・ちょっと落ち着きましょうよ(汗)」
「フフフっ(笑)」
と言って胸にしがみついたまま、離れようとしない彼女。
「もう逃がさないからね、フフっ(笑)」
「あの・・・これは・・・もう、行き着く所まで行くという事でいいですか?」
「うん・・・」
「その・・・」
「何? こんな事されるのイヤ?」
「あ、いえ、むしろ無茶苦茶嬉しいんですけど・・・・」
「けど、何?・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「解ってるよ・・・行き着く所まで行っちゃったら、その先の私達にはもう終わりしか無いって事でしょ?」
「・・・ハイ・・・・・・」
「自分はどうなってもいいんですけど、KTさんが傷付くのだけは見たくなくって」
「うん・・ありがとう・・・S君て、ホント優しいよね」
「でも、私も同じ気持ちだから・・・どうすればいいか、ずっと考えてたんだけど・・・」
「ねぇ? 二人でルール決めて付き合わない?」
「え?・・・ルール・・・ですか?」
「私も傷付きたくないし、S君にも傷付いてもらいたくないからさ・・・これから先は行き着くトコまで行っちゃうんだけど、どちらかが本気になりそうになったら、その時点で二人の関係は終了にする。」
「これがルールその1ね。」
「ハイ・・・」
「多分、自分では止められない時もあるからさ、相手が本気になりかけてるって気付いたら、お互いにちゃんと言うんだよ。でないと二人共傷付いちゃうからね。」
「その、本気の判断が難しいですよね・・・」
「そうだね。なんとなく相手の事を考え過ぎて他の事が何も手に付かなくなっちゃったりってのを感じたら、言ってくれればいいよ。」
「ハイ・・・」
「ルールその2は・・・どちらかに、もし好きな人が出来たら、同じく、その時点で二人の関係は終了。」
「それは・・・浮気とかするくらいなら、まず先に別れてからって事ですよね?」
「それもあるけど、普通に他の誰かを好きになって、その人と付き合いたいなって少しでも思ったら、その時点で終わりにしようって事だね」
「他に好きな人がいるのに、なんとなく惰性で付き合ってもらうのって、やっぱりイヤじゃん」
「それは・・・自分がM子と付き合っていながらも、ずっとS子の事が気になってたってのを言ってるんですよね?」
「そんな感じだね。なんとなくそれを聞いた時にM子さんも可愛そうだなって思っちゃったから・・・」
「それは・・・自分でも申し訳ないって思ってます・・・」
「そんなの、もう終わった事だから気にしなくていいの。 それでもちゃんとM子さん一途に尽くして来たんでしょう?」
「ハイ・・・」
「で、ルールその3は、どちらかが、もう別れたいって思ったら終了・・・これは納得だよね」
「ハイ・・・」
「最後、ルールその4は、どのパターンで別れたとしても・・・絶対に相手の後を追わない・・・」
「もう付き纏わないって事ですね?」
「そうだね」
「とりあえず、そこまでは考えてたんだけど、あと他に何かあるかな?」
「あの・・・KTさんの事、なんて呼んだらいいですか?」
「え? そんなの「女王様」に決まってるじゃない(笑)」
「プっ(笑) もう、こんな話の時までそれを出さないで下さいよ(笑)」
「フフフっ、でも私の下の名前って、お母さんみたいな名前だからさ、今まで通りでいいんじゃない?」
「プッ(笑)・・・」
「あ、今「お母さん」の所で笑ったでしょ?」
「わ、笑ってません・・・(苦笑)」
「ウソつき!!絶対「座布団一枚!」なんて思ったでしょ!」
「プッ(笑) ・・もうKTさん、最高すぎですって(笑)、ヒー、もう、涙止まらない・・(笑)」
「フフフっ(笑)」
「じゃあ・・・とりあえず私もS君って呼ぶのはそのままにするね」
「ハイ、なんでもいいです・・・・・あっ・・・(汗)」
「なんでもいいなんて言ったら「召使い」なんて呼ばれると思った?」
「プッ(笑)・・・ちょっともうこらえきれない・・・(笑)」
「KTさん、なんか今日は一段と冴えすぎですって(笑)」
「え?だって、なんだか凄く嬉しいんだもん!(笑)」
「あっ・・・」
と、また彼女に抱きつかれてキスの嵐
「ちょっ・・・ちょっと落ち着いて・・・あっ(汗)」
「こんな、どう転んでも行き着く先は別れしかない関係でも嬉しいんですか? ああーー」
もう彼女にされるがまま(汗)
「たとえ結婚できたとしても、いずれは別れを迎えるんだからさ、どんな関係だろうと一緒だって」
「だったら我慢なんてしないで、やりたいようにやっちゃった方がいいじゃん」
「そう・・・です・・ね。」
「ハイ、じゃあ決まりね。」
「あ、ちょっと、落ち着いて・・・ちょっ・・(汗)」
「ダメ!S君はもう私の物っ♪」
と、そんな感じで、正式だけど正式じゃないみたいな謎の恋愛関係が始まった。
「これは恋愛という関係になるんですかね?」
「ん?なんだろう?? 最終的に結ばれる事は100%無いから、ちょっと違うかな?」
「友達以上、恋愛未満?」
「もうその段階は今さっき私が突破しちゃった気がする・・(笑)」
「未来の無い恋愛?」
「うーん、今までは、「浮気された者同士の傷の舐め合い」だったから・・・これからは「浮気された者同士の慰め合い」かな?(笑)」
「また、どうしてすぐそんな惨めったらしい名前にしたがるんですか?(苦笑)」
「え?だって、その通りじゃん(笑)」
「もう何でもいいですよ(笑)」
楽しければ楽しいほど、そのあとの別れが辛くなる事はもちろん解っていたけれど、動き出した針はもう止める事が出来ない・・・
だったら、例え辛い別れになろうとも、残された時間を精一杯楽しもうと、それが二人の出した結論だった。
なんとなく軽いノリで付き合い始めただけのように見えるかも知れないし、別れる事が前提で付き合うなんて不謹慎だと思われるかも知れない。
でも、違うのだ。
いい加減な気持ちでも、遊びのつもりでもない。
結婚の出来ない二人がここまで好きになってしまった以上、今すぐにでも関係を絶つのが互いに傷付かずに済む最善策だという事が解ってて、
それでも・・・どうしてもこの恋を諦めたくなかった二人の、これが唯一の選択肢だったのだ。
それがたとえほんの僅かな間だけだったとしても・・・
逆に言えば、今だから許される事なのだと。
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