Chapter 19

そして・・・

パジャマ代わりのジャージに着替え、濡れた髪をタオルで巻いて浴室から

出て来た彼女は、なんだかとても可愛く見えた。


「スッピンで恥ずかしいからあんまり見ないでね」


「あ、いえ、とっても・・・・・」


「え?なんて言ったの?」


「・・・・」


「聞こえないってば」


「あの、とっても可愛いな・・・って(照)、もう、恥ずかしいから言わせないで下さいよー」


「フフッ(笑) 可愛いなんて言われたの何年ぶりだろう・・・ねぇねぇ、もっと言って(笑)」


「魔法の鏡じゃありませんから、もう。 何度も言わせないで下さいよ(汗)」


「え?魔法の鏡? 眠り姫かっ、そこは思い付かなかったなー(笑)、でも女王様にピッタリじゃない(笑)」


「眠り姫の女王様は悪役じゃないですか〜(苦笑)」

「もうシャワー浴びて来るんで、一人で鏡に向かって話してて下さいよ(笑)」


「えーもっと可愛いって言って欲しいなー」


「ダメですー(苦笑)」


と、逃げるように浴室に入ってシャワーを浴びてから、また着ていた服を着て出る。


着替えるスペースは一応あったけれど、お風呂はとても小さく、一人で入るのがやっとくらいの大きさだった。


ドライヤーを借りて髪を乾かし、その時点で時間はもう午前1時近くになっていて、

なんとなく眠くなって来たという事で、歯を磨いて寝る準備を始める・・・


「フフフっ(笑)、一緒の布団で寝る?」


「いやいやいやいや(汗)、床で寝ますから大丈夫ですって」


「えー、お客さんを床でなんて寝させられないよー」


「でもパジャマとか着てませんから、布団も汚れますし」


「そんなに照れなくてもいいって(笑)シーツなんて洗えばいいし」


「布団1枚じゃ小さすぎて二人なんて無理ですから」


「えー抱き合って寝れば十分いけるよ~(笑)」


「そんなに襲わせたいんですか(汗)」


「さっき歯磨きの時にちゃんと牙も磨いておいたから大丈夫(笑)」


「絶対襲ったりしませんから、寝てる時に噛み付かないで下さいね(苦笑)」


「フフッ、あ、タオルケットがあるからそれ使お。ならいいでしょ?」


「もう、こんなのドキドキで眠れませんってば(苦笑)、ああ、サウナ行くとか余計な事言わなきゃよかった・・・」


「フフフっ(笑)でも修学旅行の時みたいで楽しくない?」


「修学旅行で男女一緒に寝たりしたら大問題ですよーもう・・・(苦笑)」


なんとなく、嫌がってるフリをしてたものの、でも本心では物凄く嬉しかった。

最初に見た時から憧れていた女性とこんな風に一緒に寝られるなんて、むしろ夢のような気分だった。


ベッドの出来るだけ端の方で、彼女の体に触れないくらいの位置で、タオルケットを巻き、彼女に背を向ける形で寝始める。


なんとなく彼女の小さな寝息が聞こえ始め、どうやら眠りについてくれたけど、

自分は、ずっとドキドキしたまま色々な事を考えてしまい、なかなか寝付けずにいた。


どれくらい時間が経ったかは分からないけれど、彼女の寝息が止んで、

寝返りを打ってる様子・・・


と、思ったら、彼女がそのまま静かに自分の背中にしがみ付いてきた。


「あの・・・」


「・・・ごめんね・・・少しだけこのままでいさせて・・・」


それは、凄く嬉しかったけれど、身動きも取れず、彼女の体が密着して余計に目が冴えてしまい、とても眠る事なんて出来なかった。


普通なら、そこまでされたらそのまま彼女を抱いてしまうんだろうけど、

下手したら彼女を失う事になりかねないと考えると、とてもそんな気にはならなかった。


年上という事もあって、少し遠慮がちになってたのもあるかも知れないけれど、

彼女の信頼を裏切りたくないというか、それで嫌われたくないと思っていたのもきっとあったと思う。


そして、そのままの状態でまた少し時間が過ぎ、彼女が寝息を立てたのを見計らって

彼女からそっとすり抜け、静かにベランダに出てタバコを吸ってから、またそーっとベッドに戻る。


薄暗闇の中で微かに見える彼女の寝顔は、まるで少女の様に可愛かった。


ただ、彼女が自分の方に寄り過ぎて、背を向けて寝られる程のスペースが無くなってしまったので、そのまま床で寝てしまおうかとも思ったけれど、なんとなく一緒に寝てあげた方がいい気がして、こっちを向いている彼女と向き合い、優しく抱きかかえる様に寝て、タオルケットを彼女ごと包み込む様に掛ける。


彼女の髪のいい香りが漂い、更にドキドキしながらも、なんとなく眠気が襲ってきて、そのまま寝てしまいそうになった時に、彼女が何も言わずに寝たまま、静かに腕を回して抱き返して来た。


ああ、なんだか無茶苦茶嬉しいんだけど、密着し過ぎてヤバい・・・

と、思いつつも睡魔に負けて寝てしまった。


その日は、そのままの状態で、二人共グッスリと寝てしまい、それ以上の事は何も無かった。

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