Chapter 18

「あ、S君の着替えとか無いけどどうしよう・・・」


「このままの格好で床に寝ますから大丈夫ですよ」


「でもシャワーくらいは浴びたいよね。それともお風呂にする? それとも・・・」


「私にする?って言いたいんでしょ?(笑)」


「最近読みが早いなぁ(苦笑)」


「そういうのは結婚した相手に言うもんですよ(笑) 」

「もう時間遅いからシャワーだけでいいです」


「だって結婚し損なっちゃったからさー。一度言ってみたかっただけなのに、ブツブツブツブツ・・・」

「って、あ、そうそう、じゃあ先にシャワー浴びちゃって」


「そんなブツブツ言わなくても結婚なんてまた出来ますから。 あ、シャワーあとでいいですよ。KTさん先にどうぞ」


「そう?じゃあ先に入るね。鍵とか無いから、襲うなら今がチャンスだよ(笑)」


「噛み跡付けてスタジオ行ったらTさん(社長)に「お前なんだそれ?」なんて言われちゃうじゃないですか(笑)」


「フフフっ(笑)」


と笑いながら浴室に入って行った。


彼女がシャワーを浴びている時に、ベランダに出て外を眺めながらタバコを吸う。

部屋は3階にあったけれど、周りにもマンションやビルが多くて、それほど眺めのいい景色でも無かった。


彼女はいつも、この部屋で今まで何を考えて生きて来たんだろう・・・


友達も知り合いもいないこの街で、どうやって寂しさを紛らわせていたんだろう・・


もし、自分と出会ってなければ、今頃どんな生活をしていたんだろう・・・


最近はいつも戯けてばかりの彼女だけど、時折見せる寂しげな表情に、

本当はいつも孤独に押し潰されそうになってるような気がして、

自分はどうしてあげるべきなのか、いつもそんな事ばかりを考えていた。


ただ、自分もすっかり彼女に夢中になってしまい、彼女無しの生活なんて

考えられないくらいの気持ちになってしまっていたのは多分そうだと思う。


彼女を失いたくはない。

でも、このまま先へ進んでしまうと、いつかは終わりを迎える事になる。


友達という関係だったら、いつまでも友達でいられるかも知れないけれど、恋愛関係になったら行き着くのは結婚か別れしか無い。


そして、二人の今の状況では結婚を見据える事なんてとても出来ないんだから、もうその先には別れしか無いのだ。


だからその先には踏み込めない。

いや、本来ならもうこれ以上、こんな中途半端な関係を続けるべきじゃないのは、頭では解っている。


でも彼女を好きだという気持ちはどんどん大きくなるばかり・・・

そんなもどかしさとか、不安な気持ちがどんどん大きくなっていくのを、ずっと感じていた。

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