Chapter 16
ただ、好きと言ったからといって、そのまますぐ付き合うという流れにならないのがこの二人の関係であり、お互いにそれを理解してたからこその告白と言えなくもないけれど、その時はお互いの気持ちを確認し合っただけで終わり、それ以降も週末の度にどこかで会って話をするその関係は何も変わらなかった。
でもそれ以来、二人で歩いてる時は、恋人同士のように腕を組んで・・
いや、自分の腕に彼女がしがみ付く形で歩くのが当たり前になった。
まだ正式な恋人同士とは言えないような中途半端な状態ではあったけれど、それがなんとなく嬉しかった。
この時、多分、どちらかがそれ以上の関係を望めば、すぐにでもそうなっていただろうけど、そうなると、逆にこの関係の終わりが近付いてしまうという予感がして、
一気に針を進めるような事はしたくないと思っていたし、それは彼女も同じだったと思う。
ただ、それでも、動き出した針は着実に先へと進んでいた。
それまで、大体いつも夕方の6時か7時くらいから会って、10時か11時くらいまでには帰っていたけれど、つい時間を忘れて話し込んでしまい、すっかり11時を回ってしまった時の事・・・
「あ、ちょっと、もう11時過ぎちゃってるじゃん・・・帰りの電車とか大丈夫?」
彼女はN市内のマンションに住んでいたけど、自分は通勤に1時間くらい掛かるG県の実家から通っていたので、リミットは彼女よりずっと早い。
「大丈夫ですよ。もうとっくに電車ありませんから、K町のサウナかカプセルに泊まってくんで」
「え?そうなの? 途中からタクシーとかで帰れないの?」
「あ、タクシーで帰るより、泊まった方が全然安いですから。それに、この時間だともう途中までも帰れない・・・」
「え? そもそもタクシー使わずに家に帰れる最終って、何時だったの?」
「9時50分くらいだったと思います。」
「えっ?じゃあ今まで私と会ってた時って・・・」
「早ければ途中からタクシーですけど、11時近くになった時はサウナで泊まって翌朝帰ってました。」
「ええーM鉄なんて全然乗らないから、そんなの全然知らなかったよー。最終は11時くらいまであるのかなって・・」
「あ、気にしなくていいですよ。自分もKTさんと少しでも長くいたいんで。」
「えーだってお金掛かるじゃん。それは申しわけないよ~。」
「お金で二人の時間が買えるなら、喜んで払いますって・・・」
「お、なんか、カッコイイこと言っちゃって(笑)。」
「でも、ずっとお金使わせちゃっててゴメンね。もっと早く言ってくれれば良かったのに。」
「時間を気にしてたら楽しくなくなっちゃうんで、いいんですよ」
「ねぇ・・・」
「だったらウチに泊まっていきなよ。・・・」
「と言っても布団一つしかないけど・・・」
「いやいやいやいや、恋人同士って訳でもないのに、流石にそれはちょっと・・・(苦笑)」
「私の事好きなんでしょ?(笑) 一緒に夜を過ごしたいとか思わない?(笑)」
「もう、それを言わないで下さいよ~(泣)。だから困ってるんじゃないですか~」
「襲って来たら噛み付いてやるから大丈夫だよ(笑)」
「いきなり襲ったりとかしませんから、もう(苦笑)」
「フフフ、S君て紳士だもんね。だから安心して誘えるんだけど。」
「安心して誘っちゃダメですって(苦笑)。男はみんな狼なんですから」
「じゃあその狼から守って~(笑)」
「あ~もう、分かりましたよ。逆に襲って来ないで下さいね(笑)」
「フフフ、美味しい獲物を目の前にして襲わない訳無いじゃん(笑)」
「目が本気になってますって(笑)」
「大人しく女王様の餌食になりなさいっ(笑)」
「それ、まだ続けるんですか?(笑)」
「なんか気に入っちゃった♪(笑)」
「ハイハイ、女王様。早く行きますよ」
と、そんな感じで、それまで場所すらちゃんと聞いてなかった彼女のマンションに向かった。
彼女の住んでる所がそれまで気にならなかった訳じゃ無いけれど、
下心があると思われたくなかったから、詳しく聞いていなかったのに、まさかいきなり泊まる事になるとは全然思っていなかった。
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